増量する際の食事のポイント

増量する際は、ただ食べる量を増やすだけではなく、効率的に筋肉を増やすための食事方法を理解する必要があります。ここでは、増量する際の食事のポイントを紹介します。
摂取カロリーを増やす
筋肉を増やすには、摂取カロリーが消費カロリーを上回る「オーバーカロリー」を意識する必要があります。オーバーカロリーを意識することで、筋肉を効率的に成長させることが可能です。
例えば、基礎代謝が1,500Kcal(成人男性の基礎代謝量)、日常の活動や運動などによる消費カロリーが600Kcalである場合、1日の消費カロリーは2,100Kcalとなります。このような場合、増量するためには摂取カロリーを2,300~2,500Kcalに設定するのがよいとされています。
なお、増量中の体脂肪の増加について、それほど気にする必要はないとされていますが、増えすぎないように注意が必要です。まずは、無理のない範囲で少しずつ食事量を増やしていきましょう。
高タンパクな食事を摂る
筋肉を効率よく成長させるためには、タンパク質の摂取が欠かせません。増量を行う際は、体重1kgあたり2g以上のタンパク質を摂取することが推奨されます。例えば、体重が60kgの人であれば、1日120g以上のタンパク質がよいとされています。
脂質の取りすぎに注意する
増量中にオーバーカロリーを意識する際は、脂質の過剰摂取に注意しましょう。カロリーの摂取だけを目的に、お菓子や揚げ物などを食べ過ぎると脂質の過剰摂取につながります。
脂質を摂りすぎると、体脂肪の増加や悪玉コレステロールの増加など、生活習慣病の原因になるリスクが高まります。同じカロリーを摂取する分でも低脂質で高タンパクな食事メニューを選ぶように意識することが大切です。
PFCバランスを意識する
健康的に増量を行うためには、PFCバランスを意識して食事メニューを考えましょう。PFCとは、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の三大栄養素のバランスを指します。
健康的に増量するには「P:F:C=3:2:5」を目安にするとよいでしょう。適切なバランスを保つことで、効率的な筋力アップが期待できます
食事の回数を増やす
増量を行う際は、カロリーの摂取量を増やす必要があるため、食事の回数も増やすことをおすすめします。例えば、朝昼夕の3食に2~3回の間食を加えて、1日5~6回の食事回数に分けるとよいでしょう。1食あたりの食事量を増やすよりも、食事の回数を増やす方が体内の栄養が枯渇することを避けられるため、筋肉の成長を効率化できます。また、食事量を分けることで血糖値の急上昇も抑えることが可能です。
さらに、1回の食事で多くの量を食べるのが難しい人にとっても、食事回数を増やす方法は無理なくカロリーを確保するために効果的です。少量ずつ分けて食べることで、食欲がないときでも無理なくエネルギーを補給できます。
増量する際におすすめの食事メニュー

成人男性が増量を目指す場合(日常の活動や運動などによる消費カロリーが600Kcalカロリーの場合)は、摂取カロリーを2,300~2,500Kcalに設定することが推奨されます。これに基づき、以下のように1日の食事メニューを組み立てました。
・朝食の総カロリー:約520Kcal
・昼食の総カロリー:約638Kcal
・夕食の総カロリー:約752Kcal
・間食の総カロリー:約440Kcal
1日の総カロリー合計: 約2350Kcal
それぞれの詳細な食事メニューについて見ていきましょう。
朝食のメニュー例
朝食は、体を目覚めさせるためにしっかりとエネルギーを摂取することが大切です。タンパク質を摂取し、炭水化物もなるべく抜かないように心がけましょう。朝食に時間が取れない場合は、BASEブレッドといった栄養食もおすすめです。
また、朝食を摂る習慣がない人は、まずはプロテインだけでもよいので摂取するようにし、徐々に朝食を摂る習慣をつけていきましょう。以下は増量中におすすめな朝食メニューの例です。
■朝食の例
・オートミール(50g):180Kcal
・バナナ(1本):90Kcal
・アーモンドミルク(200ml):40Kcal
・プロテイン(30g):120Kcal
・ピーナッツバター(小さじ2):90Kcal
総カロリー:約520Kcal
PFCバランス:P28% / F28% / C47%
オートミールは、お米やパンよりも食物繊維の量が多く、お腹の調子を整えたり、血糖値の上昇を抑えたりする効果があります。
脂質の補給では、オートミールにピーナッツバターを加えることで美味しく食べられます。ピーナッツバターはナッツ類と同じく、健康に良い脂質(不飽和脂肪酸)を補うのに最適です。
タンパク質やビタミンの補給には、バナナやアーモンドミルク、プロテインなどを取り入れるとよいでしょう。
なお、下記の食事は低カロリーで栄養価が高く、朝食の一部としておすすめです。
補足としておすすめの食品
・ギリシャヨーグルト(無糖・低脂肪・100g):約60Kcal
・サラダ(カロリー控えめなドレッシングを使用):約40Kcal
昼食のメニュー例
昼食は、おにぎりやパンだけですませてしまうと、タンパク質・ビタミンが不足してしまいます。コンビニを利用する場合には、サラダチキンや野菜スープなどを合わせて栄養素を補うように工夫してみましょう。以下は、増量中におすすめな昼食メニューの例です。
■昼食の例
・おにぎり2個:約400Kcal
・サラダチキン(1パック):約110Kcal
・野菜スープ:約68Kcal
・ヨーグルト(無糖・低脂肪・100g):約60Kcal
総カロリー:約638Kcal
PFCバランス:P15% / F20% / C65%
おにぎりは玄米やもち麦を使ったものを選ぶと、食物繊維を多く摂取できます。サラダチキンはコンビニやスーパーで手軽に購入でき、多くのタンパク質を摂取することが可能です。昨今は、さまざまな味付けのサラダチキンが販売されているため、飽きずに食べられるでしょう。また、野菜スープやサラダを取り入れれば、栄養バランスを整えることも可能です。
さらに、下記の食事も昼食に加えることで、栄養価を高められます。
補足としておすすめの食品
・ゆで卵(1個):約70Kcal
・オリーブオイルを使ったサラダ:約100Kcal
夕食のメニュー例
夕食は消化のよい食品を選び、睡眠の質を妨げないように注意しましょう。消化には時間がかかるため、睡眠の3時間前までに食事をすませることが理想とされています。以下は、増量中におすすめな夕食メニューの例です。
■夕食の例
・ご飯(150g):約252Kcal
・焼き魚(サバ・1切れ):約200Kcal
・ひじきの煮物:約100Kcal
・キノコソテー:約100Kcal
・豆腐とわかめの味噌汁:約100Kcal
総カロリー:約752Kcal
PFCバランス:P19% / F25% / C56%
焼き魚は、タンパク質のほかにDHAやEPAなどが豊富に含まれています。これらは、血液中の中性脂肪やコレステロール値を調節する働きがあり、増量中にもおすすめの食材です。
また、キノコソテーは食物繊維が多く、ビタミンやミネラルが豊富なため、腸内環境を整えたり、免疫力を高めたりする効果が期待できます。なお、煮物は食物繊維を多く摂取できますが、糖質が多く含まれている場合もあるため、食べ過ぎには注意しましょう。
なお、下記の食事も栄養価が高く、消化に優れているため夕食におすすめです。
補足としておすすめの食品
・蒸し野菜(ブロッコリーやカリフラワーなど):約50Kcal
・低脂肪のチーズ(30g):約80Kcal
間食のメニュー例
間食は腹持ちがよく、タンパク質を補給できるものがおすすめです。スナック菓子や菓子パンなどは脂質が多く含まれているため、なるべく避けるようにしましょう。以下は、間食におすすめな食品の例です。
■間食におすすめの食品
・プロテインバー(1本):約200Kcal
・ギリシャヨーグルト(無糖・低脂肪・100g):約60Kcal
・ナッツ類(素焼きのアーモンドやクルミなど・30g):約180Kcal
総カロリー:約440Kcal
PFCバランス:P20% / F30% / C50%
プロテインバーは、仕事中でも気軽に食べることができてタンパク質を摂取できるため、間食にはおすすめの食品です。また、ナッツは栄養が豊富でビタミンやミネラル、カルシウムなどを多く含んでおり、腹持ちもよいため間食に適しています。ギリシャヨーグルトは一般的なヨーグルトよりもタンパク質が多く食べ応えもあるため、間食に向いています。
増量する際の注意点と成功のコツ

増量する際はただ体重を増やすのではなく、筋肉を成長させることが重要です。単に食べる量を増やすだけでは体脂肪のみが増加してしまい、健康を損なってしまう可能性があります。
ここでは、健康的に増量を行うための注意点や成功のコツを解説します。
カロリー管理を行う
カロリー管理を行うことは、増量を行う際に最も重要なポイントの1つです。摂取カロリーを過剰に摂ると、体脂肪のみが急激に増えてしまうリスクがあります。増量で意識するオーバーカロリーは、基礎代謝と運動で消費するカロリーに300~500kcalを上乗せする程度が目安です。また、カロリーを意識して栄養が偏らないように、バランスのよい栄養管理を心がけるようにしましょう。
摂取カロリーや栄養バランスを管理するためには、「あすけん」などの食事管理アプリを活用することをおすすめします。あすけんでは、食事や運動の記録といった基本サービスを無料で使うことが可能です。日々の食事メニューを記録すれば、摂取カロリーや栄養素の過不足を簡単に把握できます。運動を記録すれば、消費カロリーも計算できるため、増量に必要なカロリーを把握しやすくなります。
高負荷な筋トレを行う
増量を行う際には、なるべく高負荷な筋トレを行うことが推奨されます。特に、大きな筋肉を優先して鍛えることで効率的に筋肉を増やすことが可能です。体全体のなかでも胸、背中、脚といった大きな筋肉を中心に鍛えるとよいでしょう。
具体的には、スクワットやベンチプレス、デッドリフトなど複合的なトレーニング種目を積極的に取り入れると効果的です。
一方で、体脂肪を燃焼させる有酸素運動は、筋肉の分解を促進する可能性があるため、ウォーキングや軽いジョギング程度に抑えるのがおすすめです。また、筋トレの頻度は、初心者の場合は週2~3回、既に筋トレの習慣がある場合には週3~4回程度が理想とされています。筋肉はトレーニング後に回復期間が必要なため、鍛える部位を分けてトレーニングメニューを組み立てると効率よく筋肉を成長できるでしょう。
定期的に体重を計測する
増量を行う際には、定期的に体重を計測することも重要です。毎日、朝起きた直後といった同じ時間帯に体重を計測し、増減を記録する習慣をつけるとよいでしょう。毎日計測することが難しい場合は、週に数回の計測から始めてみることをおすすめします。
また、1ヶ月に体重の1~2%増加を目安にすると、筋肉の増加を優先しつつ体脂肪の増加を最小限に抑えられます。体重の増加や筋肉の付き方には個人差があるため、焦らずに継続していくことが成功するコツです。焦って必要以上に食事量や摂取カロリーを増やすと体脂肪が増える原因になってしまいます。
目標とする体重に達した場合には、摂取カロリーの見直しを行い、体重と筋肉を維持するために適度な筋トレとバランスのよい食事を続けていきましょう。
まとめ

増量を行う際には、摂取カロリーを消費カロリーよりも多くするオーバーカロリーを意識することが基本です。しかし、単に摂取カロリーを増やすだけでは健康的に増量を行うことはできません。健康的に増量を行うためには、低脂質で高タンパクな食事を心がけて、PFCバランスを意識した食事メニューを取り入れましょう。
また、増量中は大きな筋肉を中心に高負荷な筋トレを行うことで、効率よく筋肉を成長させられます。適正体重を維持することは免疫アップにもつながり、業務が忙しいなかでも体調を崩しにくくなるといったメリットもあります。本記事を参考に、理想的な体づくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。