VBAとは
Office製品で用いられるプログラミング言語
VBA(Visual Basic for Applications)は、Office製品で使用できるプログラミング言語です。ExcelやWord、Accessといったアプリケーションで活用でき、定型業務の自動化やツール開発に役立ちます。VBAでは、データ分析・整理や一括操作、外部データの収集などができます。具体的には、下記のような利用シーンが想定されます。
- 月次データの集計・計算やグラフ・表の作成を自動化
- Webサイトから企業情報のデータ収集を自動化
- Outlookと連携したメールの一括送信や文面と送付先を自動登録 など
標準機能では実現できない処理を柔軟に実装できるため、VBAは業務フローに合わせたカスタマイズ性の高さが評価されています。
VBAが近年抱えている課題
汎用性が高く活用できる場面が多い一方で2025年の崖が課題
現在でもVBAは中小企業を中心に、Excelを使った業務管理やデータ処理を効率化する手段として欠かせない存在です。汎用性の高さから、今後もさまざまなシーンでVBAは活用されるでしょう。
一方で、2018年に経済産業省が発表したDXレポートで提唱された「2025年の崖」では、レガシーシステムが存在することによるリスク・課題が懸念されています。VBAも例外ではなく、熟練の担当者が生成したコードがうまく引き継がれず、社内の技術的として残り続けていることが少なくありません。
レガシーシステムからモダンシステムへ乗り換える転換期である昨今では、VBAの需要が一定数あるものの、将来性を危惧する声も見られます。
VBAの将来性が高いといわれる理由
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Ofiice製品を導入している企業が多く需要が高いため
多くの企業が業務システムや日常業務にOffice製品を導入しており、VBAは今後も需要があるプログラミング言語の一つです。特に、日本企業ではOffice製品を使用することが一般的です。そのため、Office製品が存在する限り、VBAのニーズがなくなることは考えにくいでしょう。
新たにツールを作る案件はもちろん、既存のマクロの保守・改修も欠かせないため、VBAを用いた案件は中長期的に発生し続けます。
IT人材不足により業務効率化に注目が集まっているため
慢性的な人材不足に直面する企業では、限られた人数で成果を上げるために業務効率化を急務としています。業務効率化の手段として、VBAが注目されています。
例えば、データ入力やくり返しの作業をVBAで自動化すれば、限られた人員で業務を遂行できるようになるためです。
大規模なシステム開発を行う余裕がない中小企業にとってVBAは、低コストで導入できる、かつ即効性の高い手段であり、今後も実務で活躍する場面は増え続けるでしょう。
VBAに特化したエンジニアが少ないため
VBAは現場で利用するシーンが多いにもかかわらず、専業で対応できるエンジニアは少ない状況です。その背景には、VBAは社内の事務担当者が独学することが一般的で、専門職として学ぶエンジニアが少ない点にあります。
なお、リトルソフト株式会社が一般的な社会人を対象にした調査によると、VBAを使える方の割合は5割以下という結果でした。
結果として、VBAを使って業務効率化を図る際に、対応できる社員が不足している、かつ外注できるエンジニアが少ないことから、VBAに強い人材の希少価値が高まっています。
エンジニア以外のキャリアでも需要があるため
VBAの強みは、エンジニアだけでなく事務職や営業職、生産管理など幅広い職種で役立つ点にあります。例えば、経理担当者ならExcelマクロで月次処理を自動化したり、営業担当者の場合は見積書を自動作成したりするなど、日常業務に活かせます。
プログラミング経験がない人でもVBAは習得しやすいため、エンジニア以外の方にとっても武器になるスキルの一つです。
VBAを扱えることでエンジニアだけでなく、一般企業のバックオフィスに身を置くキャリアも実現しやすくなるでしょう。
スキルを証明できる資格があり市場価値を高めやすいため
VBAのスキルは、VBAエキスパートという民間資格によって客観的に証明できます。資格の種類は次のとおりです。
- Excel VBA ベーシック
- Excel VBA スタンダード
- Access VBA ベーシック
- Access VBA スタンダード
資格によりスキルの高さを証明できると、「独学でVBAを使える人」との差別化も可能になり、高度な能力を持つ人材として確立しやすくなります。
近年は、労働人口の減少していることからDXに関する注目が高まっている状況です。そのため、「業務効率化に繋がるスキル・資格を保有する人材を採用したい」という企業は少なくありません。
VBAのスキル・資格を活用することで自身の市場価値を高められれば、キャリアの選択肢を広げられるという観点で将来性があるといえます。
VBAの将来性が低いといわれる理由
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ほかのサービスや技術に世代交代する兆しがあるため
VBAは業務効率化の代表的な手段として長く使われてきましたが、代替となるサービスや技術が出てきています。MicrosoftでもOffice ScriptsやPower Automateなど、新しい自動化ソリューションを提供しています。
例えば、Googleスプレッドシートではクラウド上で共同編集ができ、Apps Scriptを使えば自動化も可能です。Pythonはデータ分析や機械学習にも対応できる汎用性の高さから、企業のDX推進で取り入れられるケースが増えています。
使用できる環境が限られているため
VBAが利用できるのは、基本的にOffice製品の環境に限られます。WebアプリケーションやAI開発、クラウド連携といった現代のトレンド分野には直接対応していません。そのため、ほかのプログラミング言語と比較すると、応用範囲の狭さがデメリットになります。
特に、クラウドサービスを中心に導入している企業では、VBAの出番がほとんどありません。VBAの利用環境の制約が強い部分は、将来性の観点から不利に働く要因といえるでしょう。
VBAエンジニア専門の求人数が少ないため
転職市場を確認すると、VBAを専門に扱うエンジニア求人はほかの言語に比べて少なくなっています。例えば、主要の転職サイトで「Java」や「Python」の案件が数万件単位で掲載されている一方で、「VBA」に絞ると求人数は数百件程度にとどまることが多く見られます。
理由は、VBAがあくまで業務効率化の一手段であり、大規模システム開発の中心に据えられることが少ないためです。したがって、VBAのみでエンジニアとしてキャリアを築くのは困難で、スキルの掛け合わせがマストです。
大量の情報処理に対応しきれない場合があるため
VBAは便利な自動化ツールであるものの、扱えるデータ量や処理速度には限界があります。Excel自体が数百万行規模のデータ処理を想定していないため、データを大量に扱うと動作が重くなったり、処理が途中で止まったりする問題が生じます。
そのため、VBAはビッグデータ分析や高度なデータ基盤を必要とするプロジェクトに不向きです。PythonやSQLなどの言語と比較すると、スケーラビリティが劣る点が弱みとなります。
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年収相場から見るVBAエンジニアの将来性
スキルレベルで変動するものの平均は400万~600万円が中央値
VBAエンジニアの年収は、経験やスキルレベルによって幅がありますが、平均すると400万~600万円程度が中央値です。正社員とフリーランスで年収相場に違いがあり、正社員は350万~500万円程度、フリーランスは450万~750万円ほどとなっています。
国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、国内の平均年収は460万円であり、経験・スキルを積んでいる方なら、一般的な全職種の平均年収よりも高い水準を狙えます。
しかし、ITエンジニア全体で比較すると、VBAエンジニアの平均年収は高い水準とは言い切れません。特に、AIやクラウドなどの先端分野のエンジニアの給与と比べるとやや低めの傾向があります。
とはいえ、スキルを磨けば安定した収入が期待できるため、キャリア戦略の一環としてVBAを学ぶことはおすすめです。
今からでもVBAを学ぶべき理由
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難易度が低く気軽に挑戦しやすいため
VBAはほかのプログラミング言語と比べて学習するハードルが低く、初心者でも取り組みやすい点が魅力です。Excelをはじめとした身近なソフト上で動作するため、特別な環境構築が不要です。
PythonやJavaなどの汎用言語に比べると応用範囲は狭いものの、短期間で成果に繋がりやすく、プログラミングの第一歩としても適しています。
学ぶときは書籍・学習サイト・動画コンテンツの活用が有効
VBAを学ぶ際は、書籍・学習サイト・動画コンテンツを組み合わせる方法が効果的です。
書籍は体系的に基礎を固めるのに役立ち、独学でも順序立てて理解を深められます。学習サイトでは演習問題や実例が豊富に用意されているため、実務に近い形でスキルを身につけやすいのが特徴です。
動画コンテンツを活用すれば、手順を視覚的に確認しながら学べるため、VBAをスムーズに理解できます。特に初心者は、文章ではわかりにくい部分を動画で補完するとよいでしょう。
VBAを学んで将来的に活躍するためには?
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VBAとほかのスキルを掛け合わせる
将来的にキャリアを広げるためには、VBAとあわせてデータベースやWeb開発、クラウドサービスといったほかのスキルと組み合わせることが重要です。
例えば、VBAとSQLを掛け合わせれば大規模データの処理が可能となり、Pythonと組み合わせれば高度な分析や自動化に対応できます。複数のスキルを持つことでプロジェクト全体に関与できる立場になりやすく、案件の幅や市場価値が大きく高まります。
上流工程の仕事もこなせるようにする
VBAのスキルを活かしながらキャリアを伸ばすには、要件定義や設計といった上流工程を担えるようになることが大切です。
上流工程を経験すれば、顧客や社内の課題を把握し、最適な解決策を提案できる立場となり、エンジニアとしての市場価値を高められます。マネジメントやシステム全体を見渡す力も養われるため、VBA以外の技術を扱う際にも応用可能です。
今後はAIによりコードを生成する機会も増えると考えられるため、キャリアを作業者からディレクターへ伸ばすことも視野に入れたほうがよいでしょう。
VBAとあわせて学習したい将来性が高いプログラミング言語
PHPやRubyなどの汎用性や需要が高い言語がおすすめ
VBAと並行して学ぶなら、汎用性が高く需要のある下記の言語がおすすめです。
これらの言語とVBAと組み合わせれば、単なる業務自動化にとどまらず、幅広い開発領域で活躍できます。特に、データ処理やWeb開発と組み合わせたスキルは将来性が高く、市場価値を引き上げるきっかけとなるでしょう。
まとめ
VBAはOffice製品で使用できるプログラミング言語です。需要が高くスキルを証明できる民間資格があるなどの観点から、活用できるシーンが多いといわれています。
一方で、ほかのサービスと世代交代する兆しがある、大量の情報処理に適していないという側面から、VBAのニーズが減るといわれる部分もあります。将来的に活躍する人材になるには、VBAとほかのスキルを掛け合わせ、自身の市場価値を高めることが重要です。











