――今の仕事内容を教えてください
Webシステムのアプリケーション開発を領域を問わず担当。開発チームのリーダーも務める

仕事内容
金融系Webシステムのアプリケーション開発を、バックエンドやインフラ、フロントエンドといった領域を問わずに担当しています。チームの担当プロダクトで発生する業務を職種で分けることはありません。プロジェクトの進行に即して複数フェーズを担当するケースもありますが、開発効率を高めるため、なるべくひとつの領域に集中できるようにしています。
フルスタックエンジニアと呼ばれる職種だと思うんですが、自分で「フルスタック」と呼ぶことに少し抵抗があって「アプリケーション開発をしている」というほうがしっくりくる感じです。
現在は、ビジネス側含めて10~12名のプロジェクトチームに所属し、開発チームのリーダーを担っています。リーダー職に就く前からスクラムでやっており、各タスクごとにリーダーシップを発揮する機会が豊富にあったため、現在のリーダー職という立ち位置にも抵抗なく取り組めています。
業務で使用する技術
現職の業務では、フロントエンドでNuxt.jsとTypeScript、バックエンドでC# とASP.NET Coreを使用しています。インフラはAzureで、開発手法はアジャイルとスクラムです。
迅速、かつ柔軟に開発を進めるという基本姿勢に沿った技術が導入されています。そうした技術や手法を円滑に使用するために、チーム内外との入念なコミュニケーションを図ることが、チームリーダーとしての私の役割のひとつです。
また、コミュニケーションツールとしてはMicrosoft Teamsを使っています。
勤務形態
2024年9月のリーダー職への昇格にともなって、フレックス制から裁量労働制に移行したんですが、基本的に従来と同じ9時~18時を業務に充てています。裁量労働なので残業ではないですが、自発的に通常の業務時間を伸ばすことはあります。そうした時間は月に10時間くらいです。
勤務形態は、入社時からフルリモートです。
――アプリケーションエンジニアになったきっかけ、現職に転職したきっかけは?
映像制作業界からエンジニアに転身。フルスタック的な業務を志望して現職に転職
エンジニアになったきっかけ
大学卒業後の約6年間は映像制作業界で、制作進行業務を担当していました。 社会人になって3年目あたりから、職場環境や業務内容などを改めて考えてみて、一生この業界で働くことに疑問を持つようになったんです。そこで、何となく面白そうだと感じていたWebエンジニアの初歩的な技術を、試しにUdemyやprogate、PyQなどの学習プラットフォームで勉強してみました。実際の技術学習は予想以上に楽しく、学ぶことに負担を感じませんでした。
学習を通してWebエンジニアは自分に向いていると実感し、まずはエンジニアの実務を経験しようと考えました。エンジニアになることを最優先に考え、2018年にアルバイトスタッフとしてECサイトのコーディングを始めました。生活に困らない収入を得ることができ、早めに転職できるアルバイトスタッフは最適な選択だったと思います。それが私のエンジニアとしての第一歩です。
現職に転職したきっかけ
エンジニアに転身後、フロントエンドを中心に仕事をしていたんですが、フロントエンドへのこだわりは全くなくて、できればバックエンドやインフラにも携わるフルスタック的な仕事をしたいというのが、私の希望だったんです。
エンジニアの職域をフロントエンドやバックエンドなどで分けない現職は、私の希望にマッチした職場でした。転職時の採用選考でも、フロントエンド以外の領域も含め、スキル習得のために自発的に学習していたこと。またそれが継続できることを高く評価していただいたように感じています。
――平日の1日の流れについて聞かせてください
集中力を高めやすい朝の学習時間

平日の流れ
平日の朝は6時までに起床し、7時までが学習時間です。エンジニア向け情報共有コミュニティのZennに掲載する技術記事を執筆したり、深掘りしたいと思ったTerraformやIaCなどの技術を実際に使ってみたりといったことを行います。元々、朝が苦手ではなく2歳の娘が起きるまでという時間制限もあるので、朝の学習は集中しやすくて無理なく継続できています。
7時から9時までに娘に朝食を食べさせて保育園に送り、妻と分担を決めている洗濯やごみ捨てなどの家事を済ませてから、朝食をとります。
9時の業務開始後は、まず定例のチームミーティングがあり、各メンバーが担当するタスクの進捗状況を共有します。それ以降は各自のタスクを進めます。
昼休みをはさんで、午後も定例のリーダーミーティングなど毎日何かしらのミーティングに参加。それ以外の時間は、自身の担当業務を行います。
18時の業務終了後は、娘を迎えに行った妻の帰宅を待って、家族で夕食をとります。風呂に入ってから、21時までは子どもと遊ぶ時間です。この時間に遊ばせると夜の寝かしつけがラクになるし、私の気分転換にもなっています。だいたい22時までには就寝します。早寝早起きは、エンジニアとしての業務や学習をしやすいだけでなく、父親としての娘の育児にも適した生活スタイルだと思っています。
――仕事とプライベートの切り替え方法、休日の過ごし方は?
クラス制のジム、娘と過ごす時間がリフレッシュに役立っている
仕事のプライベートの切り替え
オンとオフの切り替えに役立っているのは、クラス制のジムに通うことと、娘といっしょに散歩したり遊んだりする時間です。
何度かジムには入会したんですが、3日以上続いたのは今のジムが初めてです。楽しく無理なく継続できているポイントの1つは、クラス制のため時間が決まっている点。もう1つはインストラクターや他の参加者とコミュニケーションをとりながらトレーニングできる点です。体調も非常に良くなりました。娘を抱っこするときの足腰の安定感が全然違いますね。今は週に1回のペースで通っています。
娘との散歩や遊びの時間は、娘の健康に良いだけではなくて、私の気分転換にも欠かせないものです。
また、休日には家族3人で公園などに出かけます。休みの日の外出は、フルリモートで働いている私にとって、リフレッシュに欠かせないものです。
――今の仕事の良いところ、大変なところは?
幅広い開発業務に携われることが大きな魅力。フルリモートでのコミュニケーションの取り方には難しさを感じる部分もある
今の仕事の良いところ
最大の魅力は、エンジニアとして携わる領域が広いことです。フロントからバックエンド、インフラまでの業務にフルスタック的に取り組む今の仕事は「飽きる」ことがありません。また、この仕事は学習し理解することが常に求められるため、仕事≒学習という側面があります。これが自分にはとても心地良く感じます。
3年以上在籍して飽きないなと思った職場は、私のキャリアで初めてです。過去の勤務先では3年ほど経った頃に、次のステップに進みたい、何かを変えたいという気持ちになっていました。現職は、まだまだこの職場で挑戦できることがあると感じています。
今の仕事の大変なところ
大変だと感じるのは、フルリモートの難しさ、もどかしさでしょうか。
リモートワークでは、具体的な目的があるコミュニケーションだけを取ることになります。オフィスで交わす対面でのコミュニケーションでは、目的がない雑談的なものも生まれて、それが業務にプラスになることが少なくありません。
チームや社内のコミュニケーションを円滑にするには、対面で話す機会もあるハイブリッドのほうが良いかなと感じています。
――これまでの技術学習について教えてください
多様な技術を学習プラットフォームなどを活用して習得

これまでの学習内容
映像制作業界で働いていた2017年、学習プラットフォームのUdemyを使って初歩的な技術学習を始めました。ProgateでJavaScript、PyQでPythonも学び、技術学習を楽しいと感じるようになりました。
2018年に、マンツーマン形式のエンジニアスクールに半年間通い、HTMLやCSS、JavaScript、PHP、WordPress、SQLなどを学習。Webコーダーのアルバイト職に就き、Web業界での最初の実務を経験しました。
2019年、派遣社員としてフロントエンドの開発をするようになり、UdemyでVue.jsとJavaScriptを自主的に学習。バックエンドの学習も進めました。
2020年、専門分野をメンターから学ぶMENTAというサービスで、フロントエンドを学習。iPhoneとAndroidどちらでも動かすことができるReact Nativeという開発用フレームワークについて学びました。転職を考え始めていたため、Node.js(Express) と Reactで自作アプリの開発にも取り組み、学習プラットフォームのN予備校でプログラミング入門Webアプリコースの学習も行いました。
2021年、現職に転職後は、業務経験の無かったバックエンドとインフラのキャッチアップに取り組みました。エンジニア育成プラットフォームのRecursionの利用も開始。Zennの記事を執筆するようにもなりました。
派遣社員として働いていた前職の年収は、映像制作会社に在籍していた頃より約50万円低めでしたが、自分のキャリアプランに沿った技術学習を続けてきた結果、現在の年収は、前職より約300万円アップしています。
――取得資格、おすすめの技術書は?
Azureの認定資格2つを取得。初期学習に効果的だった3冊の書籍
保有資格
Microsoft Azureの認定資格を2つ取得しています。
Azure Developer Associate(AZ-204)を取ったのは、2024年2月。準備には40時間ほどの時間を費やしました。試験範囲のリソースを実際に作って試用することを繰り返し、最後にUdemyの模擬試験を解くというプロセスで準備を進めました。
2か月後の2024年4月、Azure Administrator Associate(AZ-104)を取得。試験準備の方法はAzure Developer Associate(AZ-204)と全く同じです。やはり40時間前後の準備期間が必要でした。
Azureは業務で使っている技術なので、体系的な理解を深めるための材料として資格を活用しました。
資格名 | 取得年 | 概要 |
Azure Administrator Associate(AZ-104) | 2024年 | ・Microsoft Azure の主要な管理業務(リソース管理、セキュリティ管理、運用管理)を実行するスキルを証明する認定資格 |
Azure Developer Associate(AZ-204) | 2024年 | ・Microsoft Azureを用いたWeb アプリの実装・管理、またAzure ストレージを利用したソリューション開発のスキルを証明する認定資格 |
おすすめの書籍
[改訂新版] 3分間ネットワーク基礎講座と3分間HTTP&メールプロトコル基礎講座、「プロになるためのWeb技術入門」の3冊は、2019年前後に私が初期の技術学習に利用した中でも特におすすめの書籍です。いずれも簡単過ぎず、習得すべき内容をわかりやすく解説しています。より高度な技術書への橋渡しに最適な良書です。
――今後のキャリアパス、興味を持っている技術をお聞かせください
テスト技術に興味あり。得意分野と幅広い知識を兼ね備えたエンジニアとして成長したい

興味のある技術
テストフレームワークのJestや、テスト自動化ツールのPlaywrightといったテスト関連技術に興味を持っています。特に自動テスト的な技術への関心が高いですね。
堅牢で分かりやすいテストを作成して、不具合が生じてもすぐに対応できるセーフティネットを整備できた際には、大きな喜びを感じます。現在のチームには、QAエンジニアがいないので、QAも業務範囲に含まれます。テスト関連スキルの向上は、担当業務の品質向上に直結するものです。
今後のキャリアパス
プロCTOの森川敬一さんがYouTube動画でお話されていた「ジェネラリストエンジニア」は、今後の方向性として魅力的だと感じています。
【YouTube】〇〇ができるエンジニアは今後も安泰?CTOを10社歴任したエンジニア育成のプロに自社サ・SES・受託開発それぞれの良さとおすすめのキャリアパスを聞いてみた!
新しいことを学ぶ段階を楽しいと感じるタイプなので、得意分野を持ちながら、幅広い知識や経験も養っていきたいと思っています。
ただ、映像制作業界で働いていた頃の自分が今のキャリアを想像できなかったように、未来予測をしても意味がないというのが私の自論で、計画はいらないと思う部分もあります。楽しいことを継続して学び、仕事や活動で価値を提供することを軸に、ボトムアップでやっていくのが私の基本戦略です。
インフラ系のスキルを評価するAzure Infrastructure Solutions(AZ-305)や、DevOpsエンジニアとしてのスキルを証明するDesigning and Implementing Microsoft DevOps Solutions(AZ-400)、データベーススペシャリスト試験などの資格取得も、検討中です。
――アプリケーションエンジニアの適性があるのはどのような人だと思いますか?
不明点をそのままにしない人、学ぶことが苦手ではない人
この職種に適性がある人
わからないことをそのままにせず、理解を積み重ねていける人は、アプリケーションエンジニアの適性があると思います。不明点があっても結果が出ればいいという人は、いつまで経っても同じことの繰り返しになりがちです。何をするにも、自分なりの仮説や根拠を持って取り組む人は、順調にスキルアップできるはずです。
もう1つは、新しいことを理解・習得するのが大好きである必要はありませんが、少なくとも苦手意識のない人。私自身、30歳からエンジニアとして働き始めて今まで続けられたのは、勉強や業務で疑問に思ったことを調べるのが、苦手ではなかったからだと思っています。楽しいことばかりではないでしょうが、いつでもプラスの感情を持って仕事に取り組めることが大事だと思っています。
私のおすすめガジェット
モニターはいろいろなサイズを試した結果、今使っている29インチに落ち着きました。これより大きいと落ち着かない気がするんです。29インチだと画面を分割して使ってもストレスがないし、圧迫感もありません。サブモニターも使っています。
まとめ
アプリケーションエンジニアとして活躍している方の仕事内容や今後イメージしているキャリアパスについてお伺いしました。
これまでにどのようなインプットを経て現職に辿り着いたのか、今の仕事で大変なことなど実際にエンジニアとして働いているからこそのリアルな声をシェアしていただきました。
未経験からエンジニアを目指している方や転職を考えている方にとって非常に貴重なインタビューでしたので、皆様の今後の活動の参考になれば幸いです。