――今の仕事内容を教えてください
経営視点から開発部門全体を統括する、EMやPdMの業務を担う
仕事内容
アライドアーキテクツ株式会社で、エンジニアリング全体を経営視点から管理するR&D統括部の部長として活動しています。担当業務はかなり広範ですが、EMやPdMと呼ばれる職域の業務が中心です。
仕事全体の中の6割ほどを占めるのが、主力プロダクトであるLetroの開発計画の立案と要求定義の策定です。エンジニアの人事評価や採用・育成方針の策定も、主要業務のひとつ。特に人材採用については、私が主体になって進めています。
R&D部門の予算設計や、さまざまな組織課題の解決も担当業務に含まれます。たとえば、社内の優秀な人材をどうやって会社の中心部分に引き込んでいくか、どんな基準で人材を選ぶのかといった部分の検討などです。事業部や機能別組織が増えてきた中で、セクションを横断したコミュニケーションを促進する施策作りも担当しています。
プロジェクトや組織をマネジメントする業務を初めて経験したのは、新卒入社した前職のSIer3年目のこと。PMとして開発プロジェクトの管理を行うようになりました。
2013年2月に現職に転職後は2年目からPMとチームリーダーを担当し、5年目に開発部長の職に就きました。その後、開発部門全体の管理業務を担う立場となり、2024年1月の組織改編によって、現在の役職に就任。エンジニア部門の管理だけでなく、会社経営に関する施策立案や運用にも携わっています。
業務で使用する技術
この職種には、実にさまざまなスキルが求められます。代表的なものを挙げると、自社プロダクトに関する知識、言語やフレームワークなど開発業務全般についてのスキル、プロジェクトの企画立案・運営スキルなど。アーキテクチャや品質管理、組織運営全般に関するスキル、人材採用・育成についての知識も必要です。
勤務形態
裁量労働制なので勤務時間は決まってないんですが、9時半から18時半の時間帯で働くようにしています。というのも、営業やカスタマーサクセスなどのビジネス職の社員の人たちがこの時間に働いているからなんです。そうした人たちとミーティングをする機会が多いので、この時間を目安にしています。
残業的な業務は、月平均で20時間ほど発生します。
出社する日を最近増やしていて、週3日か4日は出社しています。リモートは週1~2日です。管理職の立場からすると出社するメリットが大きいですし、ワンチーム感を出していこうという社員へのメッセージ的な意味合いもあります。
入社して間もないエンジニアの場合、フルリモートだと不安を抱えてしまうケースがあるんです。出社していろいろな人と顔を合わせて仕事をすると、困った時にすぐ周囲に相談できます。
エンジニア個人の生産性を考えると、リモートのほうが圧倒的にメリットがあることは、もちろん私もわかっています。ただし一方で、わからないことがあった際に横にいる人に聞くだけで疑問が解消される点などは、出社するメリットです。
疑問を解決するためにZoomを開かなければいけなかったり、チャットで言語化する必要があったりすると、いつの間にか疑問や課題が蓄積するリスクがあります。それがリモートのデメリットです。そのデメリットを解消するために、今はハイブリッドワークを推奨しています。
他部署の人とコミュニケーションを取っておくと、何かあった時に相談しやすい人間関係を構築できます。社内の人間関係は、雑談のような目的のないコミュニケーションで醸成されることが多いんです。そこで出来上がった人間関係は、仕事にも役立ちます。
――今の仕事の良いところ、大変なところは?
管理職としての責任を過剰なプレッシャーにしないために、仕事の納得感を高める
今の仕事の良いところ
最大のメリットは、とにかく個人の裁量が大きいことです。良くないと思う部分があれば、組織制度などを含めて改善や変更に取り組むことができます。
一緒に働いている人たちの中に、素晴らしい人間性を備えている人が多い点にも魅力を感じています。
今の仕事の大変なところ
裁量が大きく、企業経営に影響を与える仕事を担っているため、常に責任が伴うことになります。その責任を過剰なプレッシャーにしないためには、自分がやりたいことをするという姿勢が重要です。
ただし、やりたいことをやるだけでは、わがままになるので、やりたいことと会社が私に求めることをリンクさせる必要があります。私が責任と自信を持って「これをやろう」と言える納得感のある仕事であれば、メンバーたちのモチベーションも向上するはずです。一緒に働いているエンジニアの人たちが、この会社で私と一緒に働けて良かったと思えるような仕事をしたいと考えています。
――平日の1日の流れについて聞かせてください
勤務時間の半分近くをさまざまなミーティングに費やす
平日の流れ
朝起きるのは、だいたい7時半から8時の間です。身支度をしてから仕事の準備を始めます。
9時半をメドに仕事を始め、バックログ整理や各チームの活動報告へのフィードバック、プロダクトのUIやUX関連の提言、プロダクト戦略・戦術策定といった業務を進めていきます。
ミーティングに充てる時間は毎日3~4時間。勤務時間の半分弱はミーティングに参加しています。経営陣や部内のメンバー、他部署の責任者など、ミーティングの相手はさまざまですね。
実際に手を動かすエンジニアは、基本的にミーティングが多くないほうがいいと思っているので、 開発部門のミーティングを減らすように意識しています。開発に充てる時間を確保するために、ミーティング禁止の曜日を設ける、1回のミーティングを1時間ではなく45分にするといった施策も実施中です。
仕事の区切りがつくのは、20時前後です。日によっては夜間にまた仕事に戻ることもあります。平日の夜は友だちとオンラインゲームをしたり、自宅で筋トレをしたりすることが多いですね。
――仕事とプライベートの切り替え方法、休日の過ごし方は?
ダイエットのために始めた筋トレと有酸素運動はリフレッシュにも効果的
仕事とプライベートの切り替え
エンジニアならではの趣味は特にないですね。ゲームやダイエット、ファッション、ゴルフなどの趣味は、仕事の後や休日の気分の切り替えに役立っています。
筋トレとランニングや縄跳びといった有酸素運動も、心身のリフレッシュに効果的です。筋トレや運動をするようになったきっかけは、数年前に集中して行ったダイエットです。人前で話をする機会が増えてきたので、ある程度は容姿にも気を遣う必要があると思ってダイエットに取り組みました。その後も体型維持には注意を払っています。
――エンジニアになったきっかけ、現職に転職したきっかけは?
ユーザーに喜んでもらえるものを開発したいという思いが転職のきっかけだった
エンジニアになったきっかけ
大学は文系だったんですが、パソコンを扱うのが比較的得意で、漠然と何かパソコンを使う仕事ができたらいいなと考えていました。特にITやプログラミングについて学習した経験はなかったですね。
新卒の就職活動には正直それほど力を入れてなかった気がします。エンジニアはこの先伸びそうな職種だと考えて、SIerに就職しました。
現職に転職したきっかけ
前職のSIerで受託開発をしていたんですが、プログラムやシステムを作ってほしいと言っている人たちと、実際に使う人たちが異なる案件が多かったんです。現場の人たちがプログラムやシステムの導入を望んでないケースも少なくありません。
そういった問題自体は越えなければいけない壁なので頑張るんですけれど、 それが頻発すると、何のために作ってるんだろうという気持ちになってしまいます。
成果物を使う人たちに「仕事がラクになった、こんなことができた」と喜んでもらうことは、エンジニアの仕事の源泉になるものです。その源泉がないと思うようになったことが、転職を検討し始めた理由です。
Web系の自社開発サービスを展開している会社を中心に転職活動をして、2013年の2月に現職に転職しました。2025年現在で勤続12年になりますが、喜んでもらえるものを作りたいという思いは今も変わっていません。
――これまでの技術学習と取得資格について聞かせてください
最も重要な学習テーマは、非エンジニアとのコミュニケーションスキル
これまでの学習内容
エンジニア時代は、体系的な知識が得られる書籍での技術学習、どんなプロダクトでも通用する普遍的なプログラミングスキルに関する学習を中心に行ってきました。
前職在籍中の2008年からの約5年間は、Javaを使用したサーバーアプリケーション開発スキル、Seasar2やStrutsといったJavaのフレームワークなどを学習しました。
2013年に現職に転職してからの主な技術学習のテーマは、PHPやデザインパターン、アーキテクチャ、データベースの設計や保守運用、フレームワークのLaravelなどです。
また、私がこうした技術以上に大切だと思っているのは、非エンジニアとのコミュニケーションスキルです。問題の本質を把握する能力は、エンジニアとしての学習や経験だけでは身につきません。ビジネスに関わる人々とのコミュニケーションの総量を増やさなければ、ユーザー視点に立ったプロダクトやプログラムを作ることは困難です。
私が今こういう役職で、こういった考え方に至っているのも、非エンジニアとのコミュニケーションの時間が非常に多かったからだと思っています。
保有資格
エンジニアになって2年目の2009年、基本情報技術者を取得しました。かなり昔のことなので正直どんな準備をしたのか覚えてないんですが、業務で得た知識をベースにして、試験前には過去問を解くといった標準的な準備をしたと思います。
資格名 | 取得年 | 概要 |
基本情報技術者試験 | 2009年 | ・ITを活かしてサービスやプロダクト、システムなどを作る人材に必要な基本的な知識・技能を備え、実践的な活用能力を身につけていることを証明する資格 ・ITを活用した戦略立案やシステムの企画・要件定義、設計・開発・運用などの知識が問われる |
――今後のキャリアパス、興味を持っている技術をお聞かせください
興味深い技術は、UXが高いLaravel。人々の暮らしを豊かにする仕事に挑戦していきたい
興味のある技術
Laravelはリリース時から、とても使いやすいPHPのフレームワークだと思っていて、会社でも積極的に他のフレームワークからLaravelに切り替えていきました。こちらが思ったように動いてくれる、非常にUXが高いフレームワークです。
今後のキャリアパス
ビジョンやミッションがないお金儲けをするためだけのものではなく、これで暮らしが豊かになったと満足してもらえるようなプロダクトを作っていきたいと思っています。その結果、日本という国に貢献でき、暮らしの質の向上にもつながる仕事をしていきたいと考えています。
――管理職の適性があるのはどのような人だと思いますか?
他人のために何かすることを自分の幸福度に転換できる人は、管理職の適性を有している
この職種に適性がある人
管理職だけでなく、すべてのエンジニアにとっての適性だと思っていることが3つあります。
まず、能動的に何らかの課題を解決するアクションを起こすことができる人。考えるだけではなく、実際に行動することが大切になります。
つぎに、新しい技術や仕事に挑戦していける人。エンジニアやエンジニアを管理する立場の人にとって、必須と言える適性のひとつと考えています。変化する環境に挑戦したいという気持ちがあまりない人は、この業界には不向きです。
そして、エンジニア以外の人とコミュニケーションを取って、相手の立場から物事を考えられる人。これが最も大切な適性だと思っています。非エンジニアやユーザーの視点で業務を行うことは、プロダクトの品質向上に必要不可欠です。
私がプロダクトの開発方針の意思決定に携わることができるのは、会社のビジネスに言及できるレベルで、ビジネス面を理解しているからです。エンジニア以外の人たちがどういう考え方で仕事をしているのかを理解しないと、ユーザー視点での開発はできません。自分たちと異なる立場の人とも円滑にコミュニケーションを取って、その人が何を感じているのかを理解しないと、良いプロダクトを作るのは難しいと思います。
管理職特有の適性としては、あまり部下に遠慮しないことが重要だと思っています。
メンバーの反応を気にしすぎて、 過剰なほどメンバー寄りの行動をする管理職は意外と多いんです。それは間違いではないんですが、時には部下やメンバーの行こうとしている道を修正して、正しい方向に導く必要があります。そうした行動が、最終的にはメンバーのためになるはずです。
他人のために何かをしたり他人を幸せにしたりすることを、自分の幸福度に転換できる人は、非常に管理職に向いていると思います。
私のおすすめガジェット
2024年に購入した昇降デスクをおすすめしたいです。立っていると腰への負担が減るので、だいたい業務中の半分はデスクを高くして、立った状態で仕事をしています。
あとは、デスクの上をシンプルにして気分よく仕事をしたいので、机の下に収納できるドリンクホルダーと収納ラックを使っています。
まとめ
エンジニアリングマネージャー/プロダクトマネージャーとして活躍している方の仕事内容や今後イメージしているキャリアパスについてお伺いしました。
これまでにどのようなインプットを経て現職に辿り着いたのか、今の仕事で大変なことなど実際にエンジニアとして働いているからこそのリアルな声をシェアしていただきました。
未経験からエンジニアを目指している方や転職を考えている方にとって非常に貴重なインタビューでしたので、皆様の今後の活動の参考になれば幸いです。