――今の仕事内容を教えてください
大規模サービスの管理画面の開発ディレクターとして活動

仕事内容
開発ディレクターとして、大規模サービスで提供するコンテンツの入稿やデータチェック、設定などを行うシステムの管理画面を担当しています。
案件の要件定義から開発スケジュールの策定、品質管理までが、開発ディレクターの業務範囲です。
案件ごとにエンジニアとチームを組み、実際に管理画面を使用する部署とコミュニケーションをとりながら、業務を進めます。案件の規模は大小さまざまで、比較的規模の大きなものだと半年ほどの期間をかけて開発を行います。
業務で使用する技術
開発ディレクターの業務に必要となるのは、交渉や提案を実施するためのコミュニケーションスキルです。
コーディングをする機会はほとんどありません。テストや不具合対応などで必要になることがある程度です。使用する技術は、RubyやGASなどになります。
勤務形態
勤務時間は基本的に9時~18時で、残業は月平均20~30時間です。週に2~3回は出勤し、他の日はリモートワークで仕事をしています。フルフレックス、フルリモートも可能なんですが、ミーティングが多く他部署とのコミュニケーションが重要な業務内容を考慮して、現在の形態にしています。
――今の仕事の良いところ、大変なところは?
案件が無事に完了し、感謝された時にやりがいを感じる。スケジューリングや意見調整が難しいと思うこともある
今の仕事の良いところ
ディレクターとしてのやりがいを感じるのは、自分の判断や行動によって担当案件が円滑に進み、無事にローンチされた時です。
現職では管理画面の開発案件を担当しているので、その管理画面を使用する部署の人々から「使いやすくなった」「作業がラクになった」といった感謝の言葉を聞かせてもらえると、率直にうれしいと思います。
今の仕事の大変なところ
想定とは異なる状況になり、開発スケジュールが厳しくなった際には、この仕事の難しさを痛感します。より正確に工程を見積もることができるように、スキル向上に取り組んでいきたいです。
他部署や社外との調整がスムーズに進まない時なども、大変と感じることがあります。非エンジニアの人たちとのコミュニケーションをスムーズにとるためのヒアリングスキルや提案力を、よりいっそう高めていきたいと考えています。
――平日の1日の流れについて聞かせてください
午前中にテストや資料作成を行い、午後にはさまざまなミーティングに参加
平日の流れ
朝起きるのは6時前後です。準備を済ませて7時30分頃に子どもを保育園に送り、出勤する日はそのまま会社に向かいます。
9時に仕事を始め、午前中は簡単な案件のテストや資料作成といった作業を行います。
午後は、週1回のチーム内ミーティングや開発案件の社内ミーティング、チームのメンバーとの1on1、外部のSaaSサービスとのミーティングなどへの参加がメインの業務です。空いた時間には、午前中と同様の作業を進めます。
仕事を終えるのは、だいたい18時~19時過ぎ。夕食の後に家事や育児をして、22時以降はのんびり本を読むなど、リラックスして過ごすようにしています。就寝時間は24時頃です。
――仕事とプライベートの切り替え方法、休日の過ごし方は?
ボクシングジムでのトレーニング、子どもと遊ぶ時間が気分のリフレッシュに効果的

気分転換に役立っているのは、キックボクシングのトレーニングと子どもといっしょに遊ぶ時間です。
運動不足とストレス解消のためにボクシングジムに通い始めたのは、2024年11月です。格闘技に興味があったので、何か運動をするなら格闘技が良いかなと思いました。だいたい週に1回、1時間弱のトレーニングを続けています。
子どもはまだ小さいので、親が思うように行動してくれずにたいへんですが、楽しそうにしている子どもの姿を見るのは、やはりうれしいものです。休日によく行くのは、ショッピングモールにある子ども用の遊び場。あとは、妻の実家ですね。妻の実家でおじいちゃんやおばあちゃんに子どもと遊んでもらっています。
――PjMになったきっかけ、現職に転職したきっかけは?
新卒時からPjMやディレクター職を希望。エンジニア兼任のPjMを経て現職に開発ディレクターとして転職

PjMになったきっかけ
新卒時からPjMやディレクターとしてキャリアを積んでいきたいと考えていました。
新卒入社した1社目の会社では、システム開発部門でPjM、PLとしての業務を担当し、チームのマネジメントや取引先との調整を行っていました。技術職という肩書きではあるものの、自分でプログラミングする機会はなかったんです。PjMとしてのスキルを高めるにはエンジニアとしてのスキルも必要だと考え、自主的に技術学習を始めました。
学習を継続した結果、最初に転職した2社目と前職の3社目では、PjM兼Railsエンジニアとしての業務を担当することができました。
現職に転職したきっかけ
PjMとエンジニアの兼務を約4年半経験し、そろそろPjMやディレクター専業にするタイミングだと考えたのが、現職に転職した最大の理由です。
提供するサービスの規模が大きく、非常に品質に厳しい業務を担うことも、現職への転職を決めたポイントでした。
――これまでの技術学習と取得資格について聞かせてください
最初の勤務先在籍中からキャリアアップのために自主的な技術学習を開始。現在は英語をメインに学習中
これまでの学習内容
2013年に新卒入社した会社では実務でコードを書くことがなかったので、今後のキャリアアップのために、自主的に技術学習を開始しました。主な学習テーマはRuby、Ruby on Rails、Linuxなどです。学習に使ったのは、Railsチュートリアルや書籍、技術学習サイトのPing-tなど。仮想化プラットフォームのVMWare上にオペレーティングシステムのUbuntuを入れて、習得した技術を実際に試していました。
2社目に転職した後は、Ruby on Railsの学習により力を入れるようになり、書籍での学習にくわえて、ブログサイトの作成なども行いました。
前職への入社後は、実務でRubyやRuby on Railsのスキルを高めながら、業務で使用するAWS関連の学習を開始。AWSのコンテナオーケストレーションツールであるECS関連の知識を習得しました。
開発ディレクターとして現職に転職して以降は、技術学習に時間を費やす必要が減ったこともあり、自主学習のメインを英語にしています。また業務で使用することがあるGAS(Google Apps Script)などの勉強も行っています。
プライベートでの学習として、フロントエンドのスキル向上のために、技術学習プラットフォームのUdemyを利用してReactの勉強も行っています。
年 | 主な学習内容 |
2013年~2019年 | Ruby、Ruby on Rails、Linux |
2019年~2021年 | Ruby、Ruby on Rails |
2021年~2024年 | Ruby、Ruby on Rails、AWS(ECS) |
2024年~現在 | GAS、React、英語 |
エンジニアとしての業務を始めた2社目の勤務先から現在までの年収は、約220万円増えており、前職から現職への転職で約70万円アップしました。
保有資格
新卒入社した会社に在籍中の2018年、Linuxに関するスキル向上のためにLPICの1と2を取得しました。準備に使った時間は2つ合わせて30時間程度です。
2度目の転職直前の2021年に、業務で習得したRubyのスキルを証明するRuby技術者認定試験Silverを取得しました。準備時間は約20~30時間です。
前職在籍中の2022年、業務で使用していたAWSに関する知識を習得するために、AWS Solution Architect Asocciateを取得。準備には20~30時間ほどを費やしました。
いずれの資格も試験準備に使ったのは、書籍とWebサイトにある過去問などです。
現職に転職後、技術学習に必要な時間が減った分を英語学習に使おうと考え、2024年9月に10年ぶりにTOEICを受験。これまでのベストスコアとなる810を取ることができました。試験準備には50~60時間ほどを使い、教材としては公式問題集のほか、TOEIC用の単語集や文法問題集などを利用しました。
資格名 | 取得年 | 概要 |
AWS Solutions Architect - Associate | 2022年 | ・クラウド上のシステムを設計・構築する知識を備えていることを証明するAWSの認定資格 ・主な対象者は、1年以上の実務経験を持つソリューションアーキテクト |
Ruby技術者認定試験Silver | 2021年 | ・Rubyベースのシステムを設計、開発、運用するエンジニアなどを対象とする認定試験 ・Silverでは、Rubyの文法知識や標準ライブラリなどの基本的な知識やスキルが問われる |
LPIC-1 LPIC-2 | 2018年 | ・世界で最も認知度の高いLinux認定 ・LPIC-1では、Linuxを実行するコンピューターをインストールして構成し、基本的なネットワークを構成するスキルが問われる ・LPIC-2では、中小規模の混合ネットワークを管理するスキルが問われる |
TOEIC® Listening & Reading Test | 2024年 | ・リスニングとリーディングのスキルを測定する英語検定 ・試験時間は2時間で、結果は合否ではなく990点満点のスコアで表示される |
――おすすめの技術書は?
Rubyからプロジェクト運営まで、実務に役立つ知識を習得できた3冊
プロを目指すため人のRuby入門
『プロを目指すため人のRuby入門』はプログラミング初学者向きではないですが、業務でRubyを使用する際に知っておくべきエッセンスが詰め込まれている良書です。
Ruby技術者認定試験合格教本
『Ruby技術者認定試験合格教本』も、Ruby学習におすすめの本です。資格取得だけでなく、Rubyの最低限の仕様を調べる時に辞書的に活用できます。Rubyを使用する際に必要となるclassやmoduleなどの概念についても、詳しく解説されています。
プロジェクトのトラブル解決大全 小さな問題から大炎上まで使える「プロの火消し術86」
ディレクターやPjMの業務に関連する本としては、少し変わり種ですが『プロジェクトのトラブル解決大全 小さな問題から大炎上まで使える「プロの火消し術86」』がとても興味深い内容でした。プロジェクトでトラブルが生じたり炎上したりする要因が、具体的に示されています。プロジェクトを炎上させないためのポイントが理解できるので、一般的なプロジェクトマネジメント関連の本よりも実践的です。
――今後のキャリアパス、興味を持っている技術をお聞かせください
Reactでフロントエンドについて学習中。今後もディレクターやPjMの職域を極めていきたい
興味のある技術
Ruby on RailsとRubyは、エンジニアの仕事を始めてからずっと使用してきたので、愛着がある技術です。
また最近、フロントエンドについて改めて学習しようと考え、Reactについて勉強しています。エンジニアの職務を離れてディレクター職になりましたが、開発業務のディレクションをしていく上で、これまで学習してこなかったフロントエンドに関する知識が、業務でのコミュニケーションに役立つ機会があるだろうと考えたからです。
今後のキャリアパス
今後のキャリアビジョンとしては、ディレクターやPjMという職域を極めていきたいと思っています。案件を円滑に着地させるために、スケジュールやリソースの調整方法を考えるのが好きなんです。もちろん厳しい面も多いんですが、自分の提案や要望が実現すると、苦労して考えて良かったと思います。
開発ディレクターという職種にとって最も重要なのは、うまく物事を進めるためにどうすべきかを考えること。止まってはいけないんです。自分が動いたことで、プロジェクトがスムーズに前進したと実感できる仕事をしていきたいと考えています。
――開発ディレクターの適性があるのはどのような人だと思いますか?
相手によって言葉を言い換え、複数の視点から物事を見ることができる人

この職種に適性がある人
相手に応じて言葉を言い換えることができる人は、開発ディレクターやPjMの適性があります。
開発ディレクターやPjMは、システムの専門知識がない人からのあいまいな要望を聞き、説明や提案をすることが必要です。その際にエンジニア同士の会話と同じ言葉でやり取りしても、お互いの意図を理解できません。相手が理解しやすい言葉に言い換えて、コミュニケーションをとることが重要になります。エンジニアと非エンジニアの橋渡し役を担うには、言葉を言い換えるスキルが必要不可欠です。
さまざまな視点から物事を見ることができる人も、この仕事に向いています。
交渉や調整を行う時には、基本的に複数の案を出して相手に選ばせるのがセオリーだと思います。異なった視点から物事を考える能力は、案件のディレクションやマネジメントをする上で、非常に大切なものです。これは、IT分野に限らずチームやプロジェクトをまとめる立場で仕事をするために欠かせないスキルだと考えています。
私のおすすめガジェット
技術書や業務関連の本などの電子書籍用に、iPadを2022年頃に購入して愛用しています。持ち運びに便利なサイズで画面が大きめなので、電車移動中や外出先での読書に最適です。
まとめ
開発ディレクターとして活躍している方の仕事内容や今後イメージしているキャリアパスについてお伺いしました。
これまでにどのようなインプットを経て現職に辿り着いたのか、今の仕事で大変なことなど実際にエンジニアとして働いているからこそのリアルな声をシェアしていただきました。
未経験からエンジニアを目指している方や転職を考えている方にとって非常に貴重なインタビューでしたので、皆様の今後の活動の参考になれば幸いです。