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クリーンアーキテクチャとは?初心者向けに解説

ソフトウェア開発において、システムの保守性や拡張性を向上させるためには、適切なアーキテクチャ設計が重要です。その中でも「クリーンアーキテクチャ」は、コードを長期間にわたって分かりやすく保ち、変更に対して強い設計を可能にする手法として、広く採用されています。

本記事では、クリーンアーキテクチャの基本概念やメリット、具体的な構造について初心者向けにわかりやすく解説します。

更新日: 2025/04/23
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クリーンアーキテクチャを理解するための事前知識

グローバルイメージ

 

クリーンアーキテクチャを理解するには、まずソフトウェア設計の基本概念を押さえておきましょう。特に、依存関係の管理やレイヤー構造の考え方を知っておくと、クリーンアーキテクチャの意図やメリットをより深く理解できます。

 

ソフトウェアアーキテクチャとは

ソフトウェアアーキテクチャとは、システムの全体構造を定め、モジュールの配置やデータの流れを設計するための手法のことです。適切なアーキテクチャを採用することで、開発効率が向上し、運用や拡張がしやすくなります。

代表的なアーキテクチャとしては、「レイヤードアーキテクチャ」と「マイクロサービスアーキテクチャ」が挙げられます。レイヤードアーキテクチャは、画面表示、業務処理、データ管理などの役割ごとに層を分ける設計手法です。一方、マイクロサービスアーキテクチャは、システム全体を独立した小さなサービスの集合として構築する設計手法であり、柔軟なスケール調整や機能追加ができます。

 

アーキテクチャの目的

ソフトウェアアーキテクチャの主な目的は、システムのスケーラビリティや保守性を向上させることです。スケーラビリティの高い設計を採用すれば、システムの拡張が必要となった際にもスムーズに対応できます。

さらに、モジュールを適切に分割し、依存関係を整理することで開発の効率が向上し、トラブル発生時の影響を最小限に抑えられるのも大きな利点です。また、効率的なリソース管理を実現することで、サーバーやネットワークの負荷を最適化でき、結果としてシステムの安定性を確保することにつながります。

 

依存関係とは

依存関係とは、あるコンポーネントが他のコンポーネントに依存している状態を指します。例えば、アプリケーションが特定のデータベース構造に強く依存している場合、データベースの変更は容易ではありません。

依存関係が強すぎると、システムの一部を変更した際に影響範囲が広がり、保守や拡張が困難になります。そのため、依存関係を適切に管理することが重要です。

 

クリーンアーキテクチャとは?

システム・デバイスの組み合わせイメージ

 

クリーンアーキテクチャは、ソフトウェア開発における設計手法の一つで、Robert C. Martin(通称 Uncle Bob)によって提唱されました。このアーキテクチャの最大の特徴は「保守しやすさ」を重視している点です。

クリーンアーキテクチャでは、ソフトウェアを複数のレイヤーに分割し、それぞれのレイヤーが持つ役割を明確にします。特に、ビジネスロジックを中心に据え、その周囲に技術的な要素を配置することが重要です。これにより、ビジネスロジックが特定の技術に依存しづらくなり、データベースやフレームワークを差し替える際にも、主要なロジックを変更せずに済むようになります。

さらに、レイヤーごとに役割を分離することで、コードの可読性と再利用性が向上し、開発チームは効率的に作業できます。なお、このアプローチは、大規模なシステムの開発だけでなく、小規模なプロジェクトにおいても有効です。

 

クリーンアーキテクチャの基本構造

クリーンアーキテクチャは、下図のように4つのレイヤーで構成されています。それぞれのレイヤーに役割が明確に分かれており、依存性の方向を内側に限定することで、変更に強い設計を実現できる仕組みです。

 

引用:The Clean Architecture

 

エンティティ(Entities)

エンティティは、アプリケーションのコアとなる「ビジネスルール」を定義するレイヤーです。ビジネスルールとは、アプリケーションの本質的なロジックを指し、外部システムやフレームワークに依存しません。エンティティは、アプリケーションの核となる部分であり、他のレイヤーが変更されても影響を受けにくいことが特徴です。

 

ユースケース(Use Cases)

ユースケースは、アプリケーションの具体的な動作や処理の流れを定義するレイヤーです。外部のデータ(データベースやAPI)と直接やり取りせず、エンティティを操作する役割を持ちます。ビジネスロジックの実行手順を記述し、ユーザーの操作に応じた処理を実装する仕組みです。

 

インターフェースアダプター(Interface Adapters)

インターフェースアダプターは、外部のシステム(Web API、DB、UI)とのやり取りを統一するレイヤーです。ユースケースと外部システムの橋渡しを行い、データの形式を変換する役割を持ちます。インターフェースアダプターを設けることで、ビジネスロジックと外部システムの影響を最小限に抑えることが可能です。

 

外部フレームワーク・データベース(Frameworks and Drivers)

外部フレームワーク・データベースは、Webフレームワークやデータベース、APIなどの外部システムとの連携を担当するレイヤーです。クリーンアーキテクチャでは、このレイヤーが最も外側に配置され、ビジネスロジックには直接影響を与えないように設計されます。

例えば、データベースの種類を変更する場合でも、外部フレームワークやデータベースを適切に管理すれば、アプリケーションの他の部分に影響を及ぼすことはありません。

 

クリーンアーキテクチャのポイント

プログラムが映るパソコンの画面

 

クリーンアーキテクチャの核心は、依存関係の制御と関心の分離です。この考え方により、システムの柔軟性が向上し、技術的な変更や拡張が容易になります。ここでは、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

 

依存関係逆転の法則    

クリーンアーキテクチャでは、「依存関係逆転の法則(Dependency Inversion Principle)」が設計の根幹をなす重要な概念です。この法則では、上位のビジネスロジック層(高レベルモジュール)が、下位の具体的な実装層(低レベルモジュール)に直接依存しないように設計します。

高レベルモジュールと低レベルモジュールの間には、抽象的なインターフェースを設けることで、互いの依存関係を抑えられます。通常の設計だと高レベルモジュールは、データベースやAPIなどの低レベルモジュールに直接依存しているため、データベースや外部システムに変更があった場合に高レベルモジュールのコードも影響を受けてしまいます。

しかし、高レベルモジュールと低レベルモジュールの間にリポジトリインターフェースやサービスインターフェースを設けることで、高レベルモジュールはこのインターフェースを通してデータベースや外部サービスとやり取りを行うようにします。


これにより、データベースやフレームワークを変更しても、ビジネスロジックへの影響を最小限にとどめることが可能です。その結果、機能の追加や改修が容易になり、メンテナンスの負担も軽減されます。

 

依存関係の最小化

依存関係逆転の法則を適用することで、システム全体の依存関係を最小化できます。例えば、データベースや外部APIなどの技術的な要素が変更されても、それらを直接参照しない構造になっているため、影響範囲を最小限に抑えることが可能です。

これにより、特定の技術やフレームワークに縛られない設計が可能となり、システムの移植性や再利用性も向上します。さらに、各コンポーネントが独立性を保つことで、並行開発がしやすくなり、開発効率の向上にもつながります。

 

関心の分離

クリーンアーキテクチャのもう一つの重要な原則が「関心の分離(Separation of Concerns)」です。これは、システムの異なる関心ごと(ビジネスロジック、データアクセス、UIなど)を明確に分離することで、コードの可読性や保守性を向上させる考え方のことです。関心の分離により、以下のような特性を得られます。

  • フレームワークに依存しない
  • テストが容易
  • UIに依存しない
  • データベースに依存しない
  • 外部機能に依存しない

 

クリーンアーキテクチャのメリット

デジタル世界のビジネスサイバーネット網

 

ここでは、クリーンアーキテクチャを採用するメリットを3つ紹介します。

 

変更に強い設計になる    

クリーンアーキテクチャは、技術的な変更に柔軟に対応できる設計が可能です。システムの構造をレイヤー化し、ビジネスロジックを独立させることで、データベースやフレームワークを変更しても、システム全体に大きな影響を与えずに済みます。

たとえば、データベースを変更する場合でも、インターフェースアダプター層を修正するだけで済むため、ビジネスロジックには手を加える必要がありません。これにより、技術の進化に柔軟に対応でき、システムの長期的な開発や運用が容易になります。

 

保守しやすくなる

クリーンアーキテクチャでは、ビジネスロジックと外部システムを分離するため、コードの整理がしやすくなります。各レイヤーが独立しているため、どこを修正すればよいのかが明確になり、デバッグや機能追加の際の手間を削減可能です。

例えば、データベースのスキーマ変更やUIのアップデートを行う場合、それらの修正がビジネスロジックに影響を与えないため、安全に改修を進められます。また、役割が明確に分かれているため、新しい開発者がプロジェクトに参加しても理解しやすく、保守コストの削減にもつながります。

 

テストしやすくなる

クリーンアーキテクチャを採用すると、ユニットテストの実装が容易になります。依存関係が整理されているため、特定のレイヤーのみを対象としたテストを実行でき、効率的に品質を担保できる点がメリットです。

さらに、各レイヤーごとにテストを分けられることで、修正や変更が発生した際も影響範囲を限定しやすく、迅速に対応できるようになります。

 

まとめ

クリーンアーキテクチャは、コードの保守性や拡張性を高め、長期的に安定したシステムを構築するための有効な設計手法です。レイヤーを明確に分けることで、依存関係を整理し、テストのしやすさや変更への対応力を向上させるメリットがあります。

しかし、適用には学習コストや設計の工数がかかるため、プロジェクトの規模や目的に応じて適切な範囲で導入することが大切です。また、チーム内でアーキテクチャの意図を共有し、一貫性を持って運用することも重要なポイントとなります。

初心者の方は、まず基本的な概念を理解し、小規模なプロジェクトから試してみてください。クリーンアーキテクチャを適切に活用することで、より柔軟でメンテナンスしやすいシステムを実現できます。
 

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