SES企業とは
まず、そもそもSES企業とは何かを知っておきましょう。SES企業とは、SES(システムエンジニアリングサービス)を主に提供している企業のことです。SESは、労働力をクライアント企業に提供することで対価を得るサービスを指します。
SES企業は、エンジニアをクライアント企業へ派遣し、その労働力により収益を得るビジネスモデルが一般的です。
なお実際には、複数の業務形態を収益基盤に組み込んでいる企業もあり、明確にSES企業を区分けすることは簡単ではありません。たとえば、自社サービスを開発・提供しつつ、SESでエンジニアの派遣も行っているようなケースもあります。本記事ではSES企業を「SESをメインの収益源とする企業」というニュアンスで解説していきます。
SES求人とそうでない求人の見分け方7選

SES企業だとしても「SES」と求人に明記する義務はありません。そのため、自社サービス開発企業だと思って応募したもののSES企業だったというケースも考えられます。
自分の目標とは異なる企業を選んでしまわないよう、ここで紹介するSES求人の見分け方を知っておきましょう。
勤務地と勤務時間があいまい
SES求人は、勤務地と勤務時間があいまいな傾向が強いといえます。どのクライアント企業に派遣されるかによって、勤務地や勤務時間が変わってくるためです。複数の案件やプロジェクトを抱えている場合、1つに絞って記載することはできません。
たとえば「プロジェクトによる」といった記載がよく見られます。このように勤務地や勤務時間があいまいな場合、SES企業の可能性が高いでしょう。
社員数に対してオフィスが狭い
SES企業は、社員数に対してオフィスが狭い傾向があります。SESの場合、多くの社員がクライアント企業で働く分、広いオフィスを必要としないことが理由として考えられます。
たとえば、100名を超える社員がいながらオフィスが狭いレンタルスペースだけの場合、SES企業の可能性は高まります。ただし、SES企業でなくてもテレワークを推奨している場合、社員数に対してオフィスが狭くなるケースは少なくありません。
また、社員数やオフィスに関する情報は求人に明記されていないケースもあります。求人の企業名を手掛かりにホームページもチェックしましょう。
社内の業務風景が少ない
求人情報やホームページに写真があるかをチェックしてみましょう。社内の業務風景が少ない場合、SES企業である可能性が高いといえます。SESをメインにしている企業の場合、社内で開発することが少ないためです。
ただし、求人によっては自社で開発しているような写真が掲載されているケースもあるため、一概にはいえません。また、SESと別の業務形態を組み合わせている企業の場合、この見分け方では判別が難しいため注意が必要です。
帰社日の記載がある
SES求人だと「帰社日」の記載があるケースも珍しくありません。帰社日とは、社外に出向いている社員に、自社へ戻って来てもらう日のことです。「月1回」「月初めの営業日」など、帰社日の頻度や時期が記載されていれば、SES企業の可能性が高いです。
大半の社員が出払っているSES企業では、社員のコミュニケーションや帰属意識(企業の一員であるという意識)が希薄になりやすいといえます。そのため、コミュニケーション活性化や帰属意識向上を図るべく、帰社日を設けるSES企業は多い傾向にあります。
契約社員として募集している
SES企業の中には、契約社員としてエンジニアを募集するケースもあります。契約社員の場合、定められた契約期間が終了したとき、契約更新しなければ雇用契約は終了です。
社員が案件を選り好みしてプロジェクトに参画してくれないといったリスクを回避するために、契約社員を募集するSES企業も少なくありません。「試用期間中は契約社員」といった記載がある場合は、社員の労働条件がシビアになるケースがあるため注意しましょう。
取引先がIT企業のみ
取引先がIT企業のみの場合、SES企業である可能性が高いです。求人情報やホームページで、該当企業の取引先をチェックしてみましょう。
SES企業が労働力を提供するクライアント企業は、当然ながらエンジニアを求めています。その多くはSIer(システム開発を受託する企業)や、自社サービス開発企業といったIT企業です。つまり、純粋なSES企業ほどIT企業との取引が多くなります。
ただし、取引先にIT企業が含まれること自体は珍しくありません。たとえば、自社サービス開発企業が業務の一部をSES企業に依頼する場合も、IT企業との取引は発生します。システム開発を請け負うSIerも、IT企業との取引は多くなります。
また、IT企業以外との取引があるからといって、SES企業でないとは言い切れません。SESと自社サービス開発を兼ねるケースもあります。絶対的な判断基準とはいえませんが、傾向としてIT企業との取引が増えることを知っておきましょう。
募集人数が多い
求人情報における募集人数が多い場合、SES企業の可能性が高いです。SES企業が収益性を高めるためには、派遣できるエンジニア数を増やす必要があります。そのため、SES企業が大口でエンジニアを募集するケースは少なくありません。
ただし、求人には募集人数が記載されていないことも多いです。募集人数がわからない場合は、採用担当者に問い合わせるなどしましょう。
ホワイトSES企業の見分け方6選

SES企業の中にもホワイト企業は数多くあります。しかし、ブラック企業といわれるようなSES企業が存在することも事実です。SES企業への転職を目指す場合、ホワイトSES企業の見分け方も知っておきましょう。
教育体制が整備されている
教育体制が整備されている場合、社員を使い捨て扱いではなく中長期的に活躍できる人材として育成してくれることが考えられるため、ホワイトSES企業の可能性が高いです。具体的には、次のような特徴があるかチェックしましょう。
- 十分な社内研修期間(1~2か月程度)が設けられている
- マニュアルが整備されている
- 勉強会が頻繁に開催されている
教育体制が整備されているSES企業であれば、IT業界未経験でも活躍できる可能性があります。
エンド直案件が多い
SES企業によって、受注する案件の傾向はさまざまです。その中でも「エンド直案件」が多いSES企業は、ホワイト企業である可能性が高まります。エンド直案件とは、中間業者を介することなくクライアント企業から直接請け負う案件のことです。
IT業界は多重下請け構造の傾向があり、「案件を受注した企業」から案件を受注する、といったケースが珍しくありません。多重下請けの案件が多いSES企業だと、業務内容が限定されやすく、単価が下がるケースが多いです。ただし、営業コストを抑えやすい分、還元率(単価のうち給与として支払われる割合)が高くなりやすいメリットもあります。
一方、エンド直案件が多いSES企業では、さまざまな経験を積みやすく、高単価なケースが多いです。ただし、営業コストを費やす分、還元率が低くなりやすいデメリットもあります。
このように給与面では一長一短であるものの、働きやすさやエンジニアとしての経験を積めるという点ではエンド直案件のほうがメリットは多いです。
なお、求人情報の取引先を見たり、面接で質問したりすれば、エンド直案件が多いかチェックできます。
上流工程の案件が多い
案件の主な担当工程についてもチェックするのがおすすめです。上流工程(実装よりも前のフェーズ)に関われる案件が多いと、ホワイトSES企業の可能性は高まります。
商流が深い案件ほど、下流工程(実装やテストなど)の比重が高くなる傾向があります。開発を進める過程で手に余る業務を下請け企業に依頼する性質上、時系列的に後ろの作業が社外に切り出されやすいのです。
もちろん下流工程の業務も大切ですが、キャリアアップを目指すうえでは上流工程の経験が欠かせません。上流工程を経験しやすい企業のほうが、エンジニアとしての成長につながりやすいでしょう。
スキルアップ体制が確立している
スキルアップ体制が確立しているSES企業は、ホワイト企業である可能性が高いです。スキルアップに向けた独自のノウハウや仕組みがあると、経験が少ないエンジニアでも確実に成長できます。
エンジニアのレベルに応じた多彩な社内研修や勉強会が行われているホワイトSES企業は珍しくありません。また、先輩エンジニアによるフォローを前提とし、若手エンジニアでも高度な案件に参画できる仕組みを構築している企業もあります。
社員のキャリアパスを意識した案件を提案してくれる
エンジニアをどの案件にアサインするかは、SES企業の方針によります。その中でも、社員のキャリアパスを意識した案件を提案してくれるSES企業はホワイト企業の可能性が高いです。社員を中長期的に活躍できる人材として大切にしているためです。
社員のキャリアパスも大切にするSES企業は、新しい経験やスキルの獲得につながる案件を提案してくれます。個々に合った案件を獲得するため個人参画になるケースもありますが、着実に成長できるチャンスをもらえるのが魅力です。
また、社員に良い案件を提案してくれるSES企業には営業力があるという特徴もあるため、ホワイト企業を見分けるポイントとして押さえておきましょう。
有給消化率が高い
ホワイトSES企業は「有給消化率」が高い傾向にあります。有給消化率とは、社員に与えられた有給休暇数に対して、実際に取得できた有給休暇数の比率です。
有給消化率が高いほど、社員のワークライフバランスを大切にしている傾向が強くなります。具体的には、平均50~60%以上あることが理想です。こうしたSES企業に入社すれば、取得したいタイミングで有給休暇を取得できる可能性は高くなるでしょう。
SES企業を選ぶ際のポイント

SES企業でエンジニアとして働く場合、企業選びは重要です。ここで紹介するSES企業を選ぶ際のポイント5つを押さえておきましょう。
複数の要素から総合的に判断する
SES企業を選ぶ際は、複数の要素から総合的に判断すべきです。ホワイト企業の特徴が1つ当てはまったからといって、ホワイト企業と断定することはできません。
たとえば、教育制度が充実しているものの、有給消化率が極めて低いケースも考えられます。複数の要素から総合的に判断し、自分に合うSES企業を見つけましょう。
ホームページをチェックする
求人情報だけでなく、ホームページの情報もしっかりチェックしましょう。SES求人はエンジニアを集めるために、都合の悪い情報を入れないケースが少なくありません。
企業のホームページであれば、社員数やオフィス、取引先など、さまざまな情報を漏れなくチェックできます。できる限り多くの情報を収集することが大切です。
企業の評判もチェックする
求人情報やホームページでは、SES企業の実態は判断できないため、企業の評判もチェックしましょう。
口コミサイトやSNSなどを活用して、リアルな声を確かめるとよいでしょう。ただし、口コミサイトにはサクラが書き込んでいるケースもあるため、信憑性が低い投稿に惑わされないように注意が必要です。
転職エージェントを利用してみる
エージェントが転職活動をサポートする「転職エージェント」の活用もおすすめです。IT系の転職エージェントであれば、エンジニアに合ったSES求人を紹介してくれます。
また、企業の内情を知っているため、貴重な情報を収集できる可能性があるのも強みです。登録や利用自体には料金がかからないため、利用してみるとよいでしょう。
SNSを鵜呑みにし過ぎない
多くのIT企業や業界人が情報発信しているSNSは、SES企業の情報収集にも有用なツールです。ただし、SNSの情報だけを鵜呑みにするのはおすすめできません。
よい案件を持っているSES企業は、SNSで手厚く情報発信していないケースも多いです。そのため、SNS以外の情報源もしっかりチェックしましょう。
まとめ

IT系の求人サイトを見ると、SES企業が募集している求人も多数あります。ただし、必ずしも「SES」と明記されているわけではありません。SES企業以外のIT企業へ転職したい場合は、今回紹介した見分け方を取り入れてみましょう。
またSES企業には、さまざまな職場の経験を通してスキルアップしやすいメリットがあります。一方で、ブラック企業と呼ばれるSES企業が存在することも事実です。SES企業を選ぶ際は、さまざまな要素をチェックし、総合的に判断しましょう。