Unityとは？

広く利用されている代表的なゲームエンジン

Unityは、2005年にユニティ・テクノロジーズ社によって開発されました。ゲーム開発者向けしかなかったゲームエンジンを、よりオープンに誰もが使えるものにするために開発されました。

Unity は 2005年に Mac OS X 向けに最初に公開され、Mac でも本格的なゲーム開発が可能になりました。Macでの開発を実現したタイミングで訪れたのが、iPhoneの普及とApp Storeの登場。これにより爆発的に普及し、ゲーム開発プラットフォームとしてモバイルゲーム・インディーズゲームの開発において圧倒的なシェアを誇るようになりました。

汎用性の高さに加えて、アセットストアが充実しており、プログラミングの知識が少なくても開発に取りかかれる手軽さも魅力です。

現在、UnityはEpic Games社が開発するUnreal Engineと並んで、世界で最も人気のあるゲームエンジンの一つです。近年ではゲーム業界を超えて、建築、自動車、医療、教育といったあらゆる産業で活用されています。

Unityでできること

①ゲーム開発

Unityが最も得意とする分野です。柔軟性の高さから様々なジャンルのゲームが開発でき、アセットストアにある素材を組み合わせれば、簡単にプロトタイプを作成できます。

また、精密な物理演算シミュレーションを搭載しているので、現実に即したリアルな動きを再現できます。3Dゲームに欠かせないリアルタイムレンダリングが標準搭載されており、パーティクルシステムを用いたリアルなエフェクト演出も容易にできます。2Dゲーム向けのアニメーション機能やカメラ・ライトシステムももちろん用意されています。

そして、Unityでゲーム開発する一番のメリットはマルチプラットフォームに対応していること。現代のゲームはパソコン・スマートフォン・ゲーム機と様々なプラットフォームに対応することが当たり前となっています。Unityではパソコン・スマートフォン・各種ゲーム機に限らず、VR/ARでのプレイにも対応可能。一度開発すれば複数のプラットフォームに容易に展開できます。

開発例

②業務用アプリケーション開発

Unityは3D可視化や直感的なUIの作成に優れています。業務アプリの開発プラットフォームとして多くの企業で導入が進んでいます。一般的な業務用のカレンダーやToDo管理といったCRUD中心のアプリはWebやネイティブ向けの他技術が用いられることが多く、Unityは3D表示やリアルタイム性が要件の中心になる場合に選択されます。

例えば、慢性的な人員不足でDX化を進めている建築業界では、3D出力の鮮明さを活かして遠隔でも建設現場を確認できるアプリケーションが開発されています。自動運転の制御やシミュレーションにUnityを用いている自動車会社もあります。

こうした業界特化のアプリケーション開発のプラットフォームとして、Unityを扱う企業も増えてきました。キャリアアップを目指すエンジニアにとって最も注目すべき分野かもしれません。

開発例

• 自動車のデザイン案の可視化アプリ
• リアルタイムBIM（Building Information Modeling）…3Dモデリングした建築物をもとに様々な情報を入力してデータベース化
• 病院での手術前に行う手術シミュレーター
• 製造ラインや倉庫内のロボットの動きを検証するシミュレーター
• 危険な場所での作業を再現した研修アプリ

③XRコンテンツ開発

Unityは、XRコンテンツ開発では業界標準のプラットフォームです。3Dグラフィックの開発に強いことを活かし、現実世界と仮想世界を組み合わせたコンテンツ作成も容易。各種VR・ARグラスとの連携もしやすい点も評価されています。

XRでも特に有名なVR・AR・MRの分野でUnityがどう使われているか、簡単にまとめました。

④C#を使った拡張機能の実装

UnityはC#を主要なプログラミング言語として使用します。標準機能では実現できないような複雑な動きや独自のアルゴリズムを組み込みたい場合は、C#を使って実装します。

例えば、物理演算やAI（人工知能）の動き、複雑なゲームシステムなど、すべてC#スクリプトで記述。開発作業を効率化するためのカスタムウィンドウや機能を搭載したい場合は、Unityエディター内にC#で作成します。またC#の豊富な機能を活用すれば、データの管理や検索を効率的に行うことができ、大量のオブジェクト処理が必要な場合もスピーディーに対応できます。

すでにC#を扱っているなら、今までのスキルを直接活かせる点です。C#は他のC言語やJavaに比べて比較的簡単なので、Unityの学習と一緒に習得すれば十分活用できます。

⑤映画・アニメーション制作

リアルタイムレンダリング技術の進化により、Unityは映画やアニメーションなど映像制作ツールとしても利用されています。

標準装備されているゲームエンジン内で作業ができ、「Cinemachine」や「Timeline」のようなツールを使えば、より高精細なアニメーションやシネマティック映像をレンダリング（生成）できます。従来のレンダリングソフトよりも映像の修正が楽なのも特徴の一つ。

アニメーションに使うモデルはアセットストアで探せますし、アニメーションを付与するのも簡単。ゲーム内に組み込む演出映像だけでなく、短編アニメーションの制作にも使われています。

実際にUnityが使われている業界

ゲーム業界

繰り返しになりますが、昨今のゲーム開発においてUnityは切っても切り離せない存在です。大手ゲームメーカーからインディーズゲームに至るまで、数多くのゲーム開発にUnityが使われています。

特にスマートフォン向けゲームでは圧倒的なシェアを誇り、iOS・Android問わず数多くのヒット作が生まれています。Unityなら無料部分のみである程度のクオリティのゲーム開発ができるので、Steamなどインディーズゲーム市場を盛り上げる立役者にもなりました。

また、一つのゲームを複数のデバイスで提供できるようになったのもUnityのおかげと言えます。

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自動車業界

自動車業界ではVR技術を応用したアプリケーションが多数開発されています。例えば開発初期段階で、VR空間内に車の3Dモデルを再現し、デザイナーやエンジニアが実物大でデザインを評価・検討できるようになりました。従来、3Dモデル化はベンダーに依頼すると数日を要しましたが、Unityの活用でこれが1日で可能に。さらに、リアルタイムレンダリング機能で修正を即座に反映できるようになりました。

また、自動運転に使うAIを訓練するための仮想空間もUnityで開発。仮想空間で様々な道路を走行して走行データを取得する、といったことも行われています。

医療業界

医療業界でもVR技術を応用したアプリケーションが多数開発されています。例えば、人体の複雑な構造を3Dで再現し、医学部生の解剖学習に利用する、若手医師の手術シミュレーションに使用するといったことが行われています。リアルな体験がものを言うものの、実物に近い状態で練習がしにくい場面で活躍中です。

また、リハビリを楽しく行うためのXRコンテンツや、遠隔でリハビリを支援するコンテンツもUnityで開発されており、実際の現場にも投入されています。

建築業界

建築分野のBIMでは、建物の3Dモデル自体はRevitなどのBIMオーサリングツールで作成するのが一般的です。Unityは、そのBIMモデルをリアルタイム3Dで可視化・レビュー・体験する用途に活用されることがあります。リアルタイムレンダリングにより、設計変更内容を即座に確認したり、VRで建築予定空間のウォークスルー体験を提供して、設計段階の合意形成や課題抽出を支援できます。

さらに、遠隔で作業工程を確認する際にもVRの技術が使われており、そのシステム構築にUnityが使われています。作業者の技術向上だけでなく、現場に出にくくなったベテラン技術者の技術継承にも活用可能です。

宇宙産業

宇宙産業の分野でもUnityが使われています。ISS（国際宇宙ステーション）での作業は危険を伴うものの、事前の練習がなかなかできません。そこで危険なくISSでの作業シミュレーションができるように、VRシミュレーターを導入しています。そのシミュレーター開発に使われているのがUnityです。

また、シミュレーターだけでなく、宇宙空間を体験できるVRコンテンツにも活用しており、一般の人も宇宙を身近に感じるための普及活動にも使われています。

【エンジニア初心者向け】Unityの学び方

①環境を整える

まず、開発環境を構築しましょう。Unityでの開発に必要なものはUnity Hub・Unity Editor・Visual Studioの3つです。

Unity HubはUnityのバージョン管理やプロジェクト管理を一元化するツールで、Unity開発の肝です。最初にインストールしましょう。Unity Editorは実際の開発を行うソフトウェアです。推奨される最新LTS（長期サポート）バージョンを選んでインストールします。Visual StudioはMicrosoftが提供する統合開発環境（IDE）です。C#スクリプトを記述する際に必要なので、インストールしたうえでUnityと連携させて使います。

また、Unityは過去12か月の収益または資金調達額が10万米ドル未満の場合、無料で基本的な機能が使える「Unity Personal」というプランを提供しています。無料でも十分開発できるプランなので、まずはUnity Personalに加入しましょう。

②公式の学習コンテンツで学ぶ

作業環境を整えたら、公式のチュートリアルを活用して基礎基本を学びましょう。

「Unity Learn」というUnity公式の無料学習プラットフォームが存在しており、必要なソフトウェアのインストールからインターフェース操作まで、体系的なコースが提供されています。小さなゲームやプロジェクトを実際に作りながらUnityの基本的な仕組みを理解でき、C#の基本についても学べます。コンテンツは合わせて750時間以上と膨大ですが、手を動かしながら学べるので、まずは試してみましょう。

基本的な内容は日本語でも学習できますが、最新コンテンツのほとんどは英語で提供されています。専門用語がたくさん出るというわけではありませんが、全く英語を学習していない人には難易度が高く感じるかもしれません。ブラウザの翻訳機能を使いながら学習を進めてください。

③基礎を学んだら応用に挑戦

Unity Learnで基礎固めができたら、実践的な内容に移りましょう。一番早いのは実務で扱うことですが、その環境がない場合は、場数を踏みながら実際の開発環境のイメージがつくように情報収集を行ってみましょう。

実践的な学習方法としては、実際のコードの写経、アセットストアを使った開発、小さなものでもいいので新規開発を行うなどがあります。また、情報収集の方法としては、周りのUnity経験者に活用方法を聞く、Unityのコミュニティで質問するなどがあります。

まとめ

Unityは、ゲーム開発のみならず、XRコンテンツや高度なシミュレーション、そしてあなたの業務効率を革新するアプリケーションを開発できる、極めて強力なリアルタイム3Dプラットフォームです。

ゲーム業界でよく使われていますが、活躍の場はゲーム業界以外にも広がっています。リアルタイム3D開発の分野で経験を積み、結果を残したいならUnityを習得してみましょう！まずはUnity Hubをインストールし、小さなプロジェクトで構わないのでアイデアを形にするところから始めてみてください。