Kotlinとは?
Java仮想環境でも動作するモダン言語
Kotlinは、JetBrains社によって2011年に開発された静的型付けのプログラミング言語です。2017年にGoogleがAndroid開発における開発言語として採用しているので、名前だけは聞いたことがある人もいるでしょう。
KotlinはJavaが抱える課題の解決を目的に開発され、Java仮想マシン(JVM)上で動作する点が特徴。Javaと100%互換性があり、JVM上で動く言語としては非常に評価が高いです。シンプルな文法で記述でき、今までJavaで開発していたものよりコード量を抑えて開発ができる次世代のJVM言語として認知されています。
実際に開発するうえでどんなメリットがあるか、具体的な内容は次の項目で説明しましょう。
Kotlinで開発するメリット4選
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Javaより簡潔にコーディングができる
Kotlin導入による最大のメリットは、コードの簡潔さによる生産性の向上です。JetBrains社の公式FAQによると、同じ処理を実装する場合、Javaと比較してコード量が40%程度削減されるというデータがあります。
よく言われている文法の違いの例をいくつか挙げましょう。
- 行末のセミコロンが不要
- Javaで文の区切りを示すセミコロン。エラー箇所を探す中で「セミコロンのつけ忘れだったのか…」と頭を抱えることはありませんか?Kotlinなら改行をするだけで文の区切りを表現できます。1行の中で複数のコードを記述する際はセミコロンで区切る必要がありますが、都度入力する必要がなくなり、生産性が上がります。
- 関数の型宣言は後ろに置く
- Javaでは関数の型宣言は前に置きますが、Kotlinでは後ろに置きます。基本的には関数名の後にカッコで引数を指定した後に、中カッコで関数を記述する場合がほとんどです。
- switch文がない
- KotlinにはJavaにあるswitch文が存在せず、分岐をしたい場合はwhen文を使用します。when文はswitch文と構造は似ていますが、より柔軟性が高く、さまざまな条件分岐を簡潔に記述できます。
- 変数宣言は使い分けが必要
- Kotlinの変数宣言では”val “と"var”を使い分けています。valは定義した後に値を変更できない読み取り専用の変数で、varは変数の中身を変更できます。目的や定義に合わせて使い分ける必要がありますが、そこまで手間にはなりません。
NPEが激減する
多くのエンジニアが悩まされる実行時エラーの筆頭がNullPointerException (NPE)ではないでしょうか?特にJavaでは頻発しやすいトラブルで、NPE対処に頭を抱える場面も多いでしょう。
Kotlinは言語設計の段階から、このNPEを防止するために”Null安全性”が組み込まれています。これは変数を宣言する際にNull許容型・非Null許容型で明確に区別し、コンパイル時に強制的にNullチェックを実施。実行前にNullになるかもしれないエラーを検知できます。
Nullチェックの漏れによる実行時エラー(バグ)の発生を劇的に減らせるので、アプリケーションの品質と安定性を向上させ、最終的にはユーザーの信頼獲得にも大きく貢献します。
Android開発での相性がいい
2017年、GoogleはKotlinをAndroidアプリ開発の公式言語として採用し、2019年には「Android開発のファースト言語である」と発表しました。
Android Studioなどの開発ツールや、公式ドキュメント、ライブラリなどのサポートはKotlinが最優先。情報も日本語訳されたものが提供されているので、最新言語によくある言語の壁は感じにくいです。
また、Android開発で頻繁に発生する非同期処理やバックグラウンド処理を効率化できるように最適化されているので、Android開発との相性は最高です。
非同期処理がシンプルで開発負担を軽減できる
Javaでの非同期処理は、マルチスレッドやコールバックの扱いが複雑になりがちでした。この複雑さを解決するのが、Kotlinのライブラリにあるコルーチンです。
これは、非同期処理をあたかも同期処理であるかのように記述できます。コルーチンの中には”suspend function”と呼ばれる実装がされており、関数を中断してスレッドの使用を他の関数に譲る挙動が可能。同時に、スレッドの切り替えをサポートする実装もされています。
ネットワーク通信やデータベースアクセスといった、Web系・モバイルアプリ開発で欠かせない処理を安全かつ効率的に記述するための強力な武器となるでしょう。
導入前に知りたい!Kotlinのデメリット3選
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注意1:Android以外の開発実績がまだ少ない
現在、Kotlinの導入実績はAndroidアプリ開発が圧倒的な割合を占めます。Kotlin自体はクロスプラットフォーム開発が可能なので、Android以外にもiOSやWEB、デスクトップで動作するアプリケーション開発にも使われます。
ただ、JavaやPythonなどほかの言語と比較すると、大規模プロジェクトでの採用事例やノウハウの蓄積はまだ少ないのが現状です。
また、データ分析の分野では実績が乏しいです。Kotlinノートブックをはじめとしたデータ分析ツールは存在しますが、Pythonほどの実力や実績はありません。今後のライブラリ開発に期待しましょう。
注意2:日本語の情報に乏しい
Javaと比較すると、Kotlinは歴史が浅いため、技術情報全体の量が少ないです。Android開発の公式情報などは日本語で充実していますが、最新の機能やニッチなエラーに関する日本語での情報はさらに限られています。
ただ、現場で働くエンジニアからの注目度は高いです。エンジニア向けSNSであるQiitaでは、Kotlinを活用した開発事例やノウハウがかなり増えてきています。また、Kotlinを扱うエンジニア向けのイベント・KotlinFestも開催されており、コミュニティ自体は日本でも活発です。積極的に情報収集に励めば、最新情報を集めやすくなります。
注意3:Javaほどの汎用性はまだない
Javaは数十年の歴史の中で、金融、組込み、エンタープライズシステムなど、あらゆる分野で利用されてきた実績があります。これに対し、Kotlinの採用はまだWeb系やモバイルアプリといった領域に集中しています。
ただ裏を返せば特定の分野においてKotlinが最適解になりつつあるとも言えます。Web系企業では開発のスピード感と安全性が重視されるので、Kotlinの持つ簡潔さ、安全性、相互運用性といったメリットが上回っています。
Kotlinの市場価値と将来性は?
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スマートフォンが一般化した今、さらに需要は増える
現代において、企業のサービス開発はモバイルアプリとWebサービスが中心です。Android開発の公式言語となったKotlinは、今後もモバイル領域での需要が衰えることはありません。
2025年5月にMM総研が発表したプレスリリースによれば、2024年度のスマートフォンの出荷数は3106万台と前年度比16.4%の伸びを記録しています。5G回線の台頭などで、さらに需要が伸びると予測されています。
さらに、Kotlin Multiplatform Mobile (KMM)などの技術により、KotlinのみでAndroidとiOSの両方に対応するケースも増えています。開発コスト削減のために、Kotlinを採用する企業はますます増加するでしょう。
新たに習得すればキャリアアップにも
Google、LINEヤフー、Yahoo!カレンダーや出前館、楽天、サイバーエージェントなど名だたる有名企業がKotlinを使った開発を行っています。特にLINEヤフー株式会社はサーバーサイドの開発にも積極的にKotlinを導入しています。
開発実績が増える中、JavaとKotlinを同時に扱えるエンジニアはまだまだ少ないのが実情。Javaを扱えるエンジニアがKotlinを勉強すれば、両方の言語を使ったハイブリット開発に携わるチャンスが出てきます。
大手企業で活躍したい人だけでなく、新たなキャリアを目指すためにもKotlinは習得して損はありません。次の項目ではそんなKotlinを最短で学習するためのポイントを紹介します。
【Java経験者向け】Kotlin最短学習ロードマップ
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Step1:公式ドキュメントを読み込む
まずは、Kotlinの基本的なコンセプトと文法を学びましょう。おすすめしたいのが開発元のJetBrains社が提供するJetBrains Academy、そしてGoogleのAndroid Developersです。
JetBrains AcademyはKotlinの基礎がすべて網羅できる学習コンテンツです。Kotlin Core、Kotlin Developerなどレベル・目的別にオンライン講座が準備されており、体系的にKotlinについて学べます。ただし教材はすべて英語です。
一方、Android Developersは日本語版を提供しています。JetBrains社も公式ドキュメントとして利用を推奨しており、プラグインも連携済み。実作業にすぐ使えるコンテンツがそろっています。
Step2:構文の違いを把握する
Kotlinの基本を確認したら、Javaの知識をKotlinの文法に「翻訳」する作業に移りましょう。
先ほども説明した変数宣言の違いや関数定義で使うfunキーワードの扱い方、Null安全性の仕組みなどを手を動かしながら習得しましょう。また、開発環境に「Java to Kotlin Converter」という機能が搭載されている場合は、よく使うJavaコードをKotlinに変換した場合の構文をすぐに確認できます。
この作業はKotlinの開発によく使われるAndroid StudioまたはIntelliJ IDEAをインストールして進めると、動作も確認できるのでやりやすいです。(IntelliJ IDEAで行う場合はJDKのインストールも必要です)
Step3:既存のJavaプロジェクトにKotlinファイルを1つ追加してみる
インプット学習が終わったら、すぐにアウトプットを始めましょう。一番やりやすいのは、既存のJava開発で使ったコードをKotlinに置き換えて動作させることです。Javaとの互換性もわかりやすく、実務ではどう実装すればいいか予測しやすくなります。
もし会社から許可されたら、新規機能の実装時に既存のJavaプロジェクト内にKotlinファイルを追加して実装してみるのもよいでしょう。スモールスタートになるので他の機能への影響も抑えられますし、導入後の検証にも使えます。
まとめ
KotlinはJavaで課題となっていたNPEの乱発とコードの冗長さを解決する言語です。Javaと互換性があり、Javaより生産性高く開発できるので、コードレビューコストを大幅に削減し、アプリケーションの品質と開発効率を劇的に向上できます。
Android開発での公式採用、そしてマルチプラットフォーム化の波により、Kotlinエンジニアの市場価値は高まる一方。Kotlinを習得できれば、モダンな開発をリードする技術的リーダーになれる可能性もあります。その第一歩として、まずは公式ドキュメントを読むところから始めてみましょう!











