COBOLとは?
60年以上使われているビジネス向けのプログラミング言語
COBOL(コボル)は1959年にアメリカで開発された、主にビジネス向けのシステムで活用されるプログラミング言語です。世界中で60年以上もの間、使用されている言語であり、一昔前までは主流の言語でした。
日次・月次処理などの繰り返し作業、大量データの一括処理、帳票出力といった定型業務に強く、企業の基幹業務に適していたことから普及したという背景があります。処理の安定性が高く、20年30年と長期間動き続けるシステムが多いこともCOBOLの特徴です。
現代の開発言語と比べると柔軟性には欠けますが、構築されたシステムの多くが社会基盤の一部となっているため、COBOLは単なる古い言語ではなく、信頼性と実績に裏付けられた存在として今も重用されています。
なぜCOBOLは「廃れた」「オワコン」と言われる?
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学習コストの高さと若手技術者の不足
COBOLが廃れたといわれる最大の要因の一つは、学習環境の乏しさとそれに起因する若手技術者の不足です。2020年以降、基本情報技術者試験からCOBOLが除外され、大学や専門学校でも教える機会が激減しました。その結果、新卒エンジニアがCOBOLに触れる機会はほとんどなく、エンジニアの高齢化が進んでいます。
さらに、COBOLは文法が奥が深く、開発現場では独自のルールや設計思想が積み重なっています。ドキュメントが少ないレガシーシステムでは、学習コストが高くなりやすい傾向が見られます。教育体制が整っていない企業では、新人がCOBOLを習得するまでに多くの時間と労力が必要となり、結果として技術者の育成が進みにくい現状があります。
実際、COBOLエンジニアの平均年齢は50歳を超えているといわれており、今後10年以内に多くのベテランが退職することが業界全体の課題となっています。世代交代が進まないままCOBOLに依存し続けることで、保守体制の維持・管理に頭を悩ませている企業が少なくありません。
手続き型言語としての記述量が多い
COBOLは手続き型言語として設計されており、記述量が多くなりやすいです。例えば、現代のプログラミング言語では1行で済む処理も、COBOLでは数行かかることがあります。冗長性がコードの読みづらさや理解のしづらさを引き起こし、開発効率の低下を招いています。
また、COBOLを使ったシステムの多くは、モジュール化やオブジェクト指向の考え方がなかった2002年以前に作られており、、再利用性や保守性にも限界があります。特に大量の処理を記述する必要があるシステムでは、わかりにくいコードが、バグの温床となることがあります。
コードの取り扱いにくさにより現代のエンジニアから「COBOLは非効率的で美しくない」と敬遠されやすく、PythonやJavaなどのモダンな言語が好まれています。
新規開発で使用される場面が減っているため
現在、COBOLが新規開発の現場で使われる機会はごくわずかです。多くの企業では新たなシステム開発で、JavaやPython、C#などのモダンな言語を選んでいます。その理由として、COBOL技術者の減少に加え、従来のレガシーな構成ではクラウドサービスやAPIとの連携に制約が生じやすい点が挙げられます。
ただし、近年ではベンダー製品を活用し、既存のCOBOL資産をREST API化してクラウドや分散環境に接続する選択肢も登場しています。
COBOLが得意とするバッチ処理や帳票出力などは、現代ではより柔軟かつ高速に処理できる仕組みが数多く存在します。特にクラウド移行を進める企業にとって、COBOLのシステムをそのまま移行するのは現実的ではなく、マイグレーションや再構築が選択されることが増えています。
新規開発で使われないことで、ますます技術者が集まりにくくなり、COBOLは廃れる流れが加速している状況です。
負の遺産となり経済損失を生む恐れがあるため
COBOLで構築されたシステムは、今後、負の遺産として企業に残り続ける恐れがあります。その背景には、保守担当者の高齢化と技術継承の停滞があり、システムの内部構造がブラックボックス化してしまっているケースも少なくありません。
特に、注目されているのが「2025年の崖」と呼ばれる問題です。経済産業省が2018年に公開したDXレポートで唱えられたこの問題は、老朽化したシステムを維持する人材の引退によって、国内で年間12兆円規模の経済損失が生じる可能性があるという試算に基づいています。
COBOLによって生み出されたレガシーシステムも、業務知識とソースコードが密接に結びついているため、担当者の退職とともにノウハウが失われるリスクがあります。さらに、古い設計思想のまま運用が続くことで、機能を追加したり仕様変更をしたりする際に、多大なコストがかかります。
COBOLによるシステムが残り続けることで国家レベルの損失に繋がる恐れがあり、COBOLが廃れた技術と見なされる場面が増えている状況にあります。
大手企業で脱COBOLが進んでいるため
近年、多くの大手企業で「脱COBOL」の動きが加速しています。例えば、みずほ銀行は度重なる障害を踏まえ、新勘定系「MINORI」へ段階移行し、メインフレーム(IBM Z)+オープン系(Java中心)のハイブリッドで安定性と拡張性の両立を図っています。
脱COBOLの流れは、システムの保守性や将来性を重視する企業戦略の取り組みの一つです。グローバル展開やDXを視野に入れる企業にとってCOBOLでは、対応が難しいと考えられるケースが増えています。
一方で、地方自治体や中小金融機関などでは、COBOLを選択している組織も存在します。これは、システムの安定稼働を最優先し、大規模な改修にかかるコストやリスクを避けたいという事情によるものです。
とはいえ、全体としては脱COBOLの方向に進んでおり、ほかの言語へ移行する流れは避けられません。
COBOLが廃れず今も重宝されている理由
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膨大な既存システムが今も社会インフラを動かしている
COBOLが廃れずに現役で使われている大きな理由は、既存の巨大システムが今も社会インフラとして稼働しているためです。
特に、銀行や保険、年金や自治体の基幹システムなど、停止することが許されない領域では、COBOLが高く評価され続けています。また、COBOLは事務処理や大量データの一括処理に特化した構造を持ち、バッチ処理や帳票出力において高い信頼性を発揮します。
これらのシステムを最新言語に置き換えるには、設計の見直しから再構築、動作検証まで膨大なコストと工数が必要です。長年蓄積された業務ロジックを完全に再現することは容易でなく、マイグレーションには高いリスクが伴います。
そのため、多少の古さや課題があっても、COBOLを今もなお重宝する企業は少なくありません。
技術者不足がもたらす「需要>供給」の逆転現象
COBOLを扱えるエンジニアの数が年々減少している一方で、現場では依然としてCOBOLシステムの保守・改修が求められています。そのため、COBOLエンジニアの需要が供給を大きく上回っているのが現状です。
ベテランエンジニアの定年退職が進むなか、若手のCOBOLエンジニアがほとんど育っておらず、既存システムのメンテナンスを担える人材が不足しています。この背景から、COBOLの知識を持つエンジニアは、案件を安定して受注しやすい傾向にあります。
フリーランス市場ではCOBOL案件が高単価で募集されることが多く、実務経験があれば、ほかの分野よりも継続的な仕事を確保しやすいというメリットもあります。
COBOLに将来性はあるか?
将来性は低いものの今後も需要は残る可能性が高い
COBOLは業界全体から見ればレガシー技術であり、将来性が高いとはいえません。クラウドやAI、モダンなアーキテクチャとの親和性が低いため、今後主流になる可能性は低いでしょう。
しかし、COBOLに対する需要が急激にゼロになることはありません。なぜなら、依然として多くの基幹システムがCOBOLで稼働しており、保守・改修・機能追加を行う人材は今後も必要になるためです。
さらに、マイグレーションには膨大なコストとリスクが伴うため、すぐに全システムが置き換えられる可能性も低いといえます。少なくとも向こう10年は、縮小しながらも需要が残る技術として一定の役割を果たし続けるでしょう。
将来性は限定的であっても、役割を終えた言語と評価するには早いのがCOBOLの現状です。
COBOLの代替となる言語
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Java
Javaは、オブジェクト指向型の汎用プログラミング言語として広く普及しており、COBOLの代替として多くの企業で採用されています。「一度書けばどこでも動く(Write Once, Run Anywhere)」という思想に基づく高い移植性が特徴です。OSや環境に依存せず、システムを柔軟に実行できます。
豊富なライブラリと安定した処理能力を持つJavaは、業務アプリケーションの開発に適しています。日本のメガバンクや官公庁では、COBOLからJavaへのマイグレーション事例が増えており、特に勘定系システムの刷新において主流になりつつあります。
また、Javaは長年にわたり開発が続けられており、学習リソースやフレームワークが充実しています。そのため、保守や開発の引き継ぎもしやすく、将来性という点でも安心感があります。
Python
Pythonは、シンプルで可読性の高い文法を持つ汎用プログラミング言語です。近年ではAIやデータ分析の分野で注目を集めており、業務アプリケーションの開発にも十分な実力を備えています。コードの記述量が少なく済むため、開発スピードの向上やメンテナンス性の高さが評価されています。
COBOLが得意としていた事務処理やデータ処理といった分野にも、Pythonは適応することが可能です。PandasやNumPyといった外部ライブラリを活用することで、大規模なデータの処理も効率的に実現できます。
さらに、Pythonは初心者でも学びやすい構文が特徴で、新人エンジニアの育成にも適しています。教育コストを抑えつつ、COBOLからの移行先として柔軟に活用できる点も大きな強みです。
Go
Goは、Googleが開発したモダンなプログラミング言語で、高速な実行性能とシンプルな文法を兼ね備えています。特に並列処理に優れており、大量のトランザクションを同時に処理する必要がある金融系や業務システムにおいて、COBOLの代替として注目を集めています。
とはいえ、Goは比較的新しい言語で今後主流になる可能性は秘めているものの、長期的に運用された実績がない・成熟した技術者が不足しているなどの課題を有しています。また、Javaに比べるとライブラリなどが乏しく、1から作成しなくてはならない場面が少なくないことも実情です。
そのため、2025年10月時点では、COBOLの代わりとして根幹はJava、その他のサブシステムはGoといったように棲み分けするのが現実的です。
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まとめ
COBOLは技術者の高齢化や学習コストの高さにより、新規開発では選ばれにくくなっています。一方で、金融や行政などの基幹システムに深く根付いており、保守や改修といった需要は今も継続しています。将来性は限定的ですが、今後も一定の役割を果たし続ける可能性は高いです。
JavaやPython、Goといった言語は、COBOLに代わる選択肢として実績も増えており、今から学ぶならこれらの言語の習得が現実的です。技術の流れを理解し、将来を見据えたスキル選択を行うことが、エンジニアとしての成長に繋がります。











