COBOLの需要はまだある?
新システム構築が進む今だから需要がある
「COBOLの需要はもうないのでは?」そう思う方もいるかもしれません。しかし、日本の基幹システムはいまだにCOBOLで動いているものが多く、COBOLエンジニアの需要は依然として高い状態です。
特に銀行や保険会社、官公庁などの基幹システムはいまだにCOBOLが使われています。1970年代から稼働しているシステムも多く、老朽化に伴い新しい技術への移行が進んでいます。
現代のCOBOLエンジニアには既存システムの保守・運用だけでなく、新しいシステムへの移行・古いシステムの刷新といった大きなプロジェクトが任されます。長年の経験とCOBOLの深い知識が求められる場面が増え、「COBOLが扱えるなら単価を上げる」という事例も少なくありません。
COBOLの資格を取得するメリット
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自身のスキルの証明になる
1つ目はスキルの証明になることです。長年のCOBOL開発経験は大きな強みですが、客観的な評価が難しいと感じることもあるでしょう。COBOLの資格を取得すれば、あなたのスキルレベルがわかりやすくなり、説得力を持たせられます。
また、「COBOLを扱ってきたものの実務に必要な内容しか身に付けていない」というエンジニアもいるでしょう。資格取得を通してCOBOLを体系的に学びなおすことができ、よりどんな現場でも通用するエンジニアになれます。リスキリングにも最適です。
金融・公共系案件で重宝される
2つ目は特定の業界、特に金融・公共系案件で重宝されることです。COBOLは金融や公共分野の基幹システムで広く使われています。この分野はシステムの安定性が重要で、「システムが古いから、新しいものに変える」ことが簡単にできません。仮に移行するにしても、かつてみずほ銀行のシステム移管に約20年かかった事例があるように、一朝一夕で仕上がるものでもありません。
絶対に止められないシステムだからこそ、今まで通りCOBOLの知識を持つエンジニアは特に重宝されます。実績に加えてCOBOLの資格を持つことで、より専門性の高い案件に参画するチャンスが広がります。
若手エンジニアにはできない仕事ができる
3つ目は若手エンジニアにはできない仕事ができることです。
COBOLはかつては商業高校でも学ぶくらいメジャーな言語でした。しかし、昨今ではCOBOLより扱いやすく、汎用性のある言語がどんどん増えています。若手エンジニアがCOBOLを学習できる機会は限られており、COBOLを扱える若手エンジニアはほぼいません。COBOLを扱えるベテランエンジニアが年間3000人退職するといわれている一方で、COBOLを扱える新しいエンジニアの参入がほぼない状態では開発現場の需要を満たせません。
COBOLの深い知識と、これまでの開発経験は、若手にはない大きな武器になりえます。老朽化したシステムの改修や、複雑なビジネスロジックの理解など、COBOLの経験者だからこそできる仕事がたくさんあります。
COBOL資格の一覧
Micro Focus Certified Professional
Micro Focus Certified Professionalは、COBOLを開発・保守するMicro Focus社の製品に関する専門知識を証明する資格です。この資格ではCOBOLの文法、構文、データ処理に加え、Micro FocusのCOBOL開発ツール(例えばMicro Focus Enterprise Developer)の利用方法などが含まれます。試験の種類は複数ありますが、どの試験も試験時間は120分、問題数は50問とじっくり考えながら進めるタイプの試験です。
COBOLの専門家として、より実践的なスキルをアピールしたい方に適していますが、試験は英語で実施。難易度は参加するプログラムと語学力によって左右されます。
IBM Certified Mainframe Associate Developer
IBMが提供するCOBOLプログラミング全般について学べる資格です。IBMのメインフレーム上で動作するアプリケーション開発に関するスキルを証明することが目的で、COBOLだけでなく、メインフレーム環境に関する知識も問われます。製品とレベルごとに資格が設けられているので、業界内でよく使われている製品の資格を取ると、仕事を獲得しやすくなるでしょう。日本向けサイトも用意されていますが、試験自体は英語で実施されます。レベルにより前後しますが、問題数は75~100問、制限時間は1~2時間程度です。
ITパスポートなど基礎資格
ここまで英語で受験する資格を紹介してきました。実は2025年8月現在、日本国内で取得できるIT関連資格で、COBOLを扱うものがほぼありません。
過去にはCOBOLプログラミング能力認定試験・パソコン技術者試験 COBOLⅡなどが存在していましたが、どちらも廃止されました。2020年4月実施分をもって基本情報処理技術者試験からもCOBOLに関する問題がなくなっています。
唯一、ITパスポートはいまだにCOBOLに関連する問題を出していますが、問題量はごくわずかです。ただ、IT業界でのキャリアを継続するうえで、COBOL以外のIT知識があることを証明するのに役立ちます。ITパスポートに限らず、基本情報処理技術者・応用情報技術者などITの基礎にまつわる資格を取っておいて損はないものの、日本語でCOBOLを専門的に学ぶ場合は独学しかないのが現状です。
COBOLの資格勉強に役立つ書籍
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[改訂新版]実践COBOLプログラミング入門
COBOLの基本的な文法や開発環境の構築方法を、具体的な例を交えながら学べます。初心者でも理解しやすい内容なので、久しぶりにCOBOLを触る方にもおすすめ。ただ、実践的な内容には乏しいので、基礎を振り返ったら別の参考書を探したほうが無難です。
開発現場で役立つCOBOLプログラミング入門第2版
実践的なCOBOLプログラミングのノウハウが詰まった一冊です。業務システム開発におけるCOBOLの活用法が学べます。こちらもブランクがある方にも易しい内容で、COBOL経験がない人も安心して読める内容です。
標準COBOLプログラミング第2版
COBOLの標準規格に準拠した内容で、COBOLの深い知識を身につけたい人におすすめです。使用頻度の高い文法に焦点を当てた構成になっており、リファレンスとしても活用できます。
COBOLの資格が輝く職場
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金融業界
銀行の要である口座管理や入出金管理システム、証券会社の取引・決裁管理システム、保険会社の契約システムなど、金融業界の基幹システムはCOBOLで動いています。システムの刷新を検討する企業も増えていますが、移行期間中はCOBOLの知識が欠かせません。とある大手都市銀行ではCOBOLエンジニア確保を最重要課題にするほど、COBOLの知識は求められています。
公共分野
官公庁や自治体のシステムも、COBOLを使っている場合が多いです。年金・健康保険のような社会保障関連システムから税務システム、住民基本台帳のシステムもCOBOLで動作しています。制度改正対応ではシステムの理解と素早い対応が必須。経験豊富なエンジニアが求められています。
また、金融業界ほど新システム移行の話が上がりにくいのも公共分野ならでは。運用に影響をもたらすような大規模な脆弱性が指摘されない限り、COBOLを使い続ける可能性があるでしょう。
大手製造業・流通業
生産管理システムや在庫管理システムなども、COBOLが使われています。製造・流通どちらでも安定稼働が欠かせないため、部品調達から在庫管理、売上管理など基幹システムにCOBOLを使ったままの企業が存在しています。大企業であればあるほど数十年運用してきたシステムが存在しており、レガシーシステムを扱えるエンジニアは重宝されるでしょう。
SIer
システムインテグレーター(SIer)では、COBOLを採用している企業での保守運用や、レガシーシステムからの移管、若手エンジニアへの技術継承などあらゆる場面でCOBOL技術が求められています。
例えば、富士通では2024年から「モダナイマイスター」という制度を設けて、ベテランエンジニアの現場投入に力を入れています。モダナイマイスターはレガシーシステムからの移管―モダナイゼーションの課題の一つである、ブラックボックス化したレガシーシステムの課題を見つけ、モダナイゼーションを推進する立場。富士通のようにベテランエンジニアの獲得に注力するSIerは増えており、COBOLスキルが求められるプロジェクトも増えているといえるでしょう。
COBOL資格を持つミドルエンジニアの働き方
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定年後の再就職
COBOLエンジニアは希少価値が高いため、定年後も再就職しやすく、長く働き続けられます。安定した収入や福利厚生の中で働けるだけでなく、組織内の役割がはっきりしているので目指すべきエンジニア像がはっきりします。組織内での技術継承に力を入れたい、安定した仕事につきたい方は再就職を視野に入れましょう。ただし、フルタイム勤務が前提になるので、体力に自信がない場合は他の働き方を検討しましょう。
フリーランス
フリーランスとして、単発のCOBOL案件を受注する働き方も可能です。COBOLを扱う請負案件は受注単価が高くなりやすい傾向にあるので、柔軟な働き方をしながらもしっかり稼ぐことができます。今まで培ってきたCOBOL技術を活かしたい方にはもってこいの働き方ですが、案件が取れないと収入減に直結します。また、自己管理能力も求められるので、自立して働けるかどうかも重要です。
派遣社員
SESの派遣社員として、特定のプロジェクトに参画するのも一つの方法です。定年後の再就職同様、雇用保険や社会保険に入れるので生活基盤を築きやすいでしょう。自分のスキルを活かせる様々な案件に参画でき、案件が終了しても次の仕事を紹介してもらえるのでフリーランスのように仕事が途切れる心配もありません。ただ、正社員よりは不安定さが残ってしまうのが派遣社員のデメリット。安定性と柔軟性を両立したい方にはちょうどよいでしょう。
アドバイザー
COBOLの深い知識を活かし、若手エンジニアや企業への技術アドバイザーとして働く道もあります。今までの知識を活かして後進育成に携わりつつも、自分自身の負担は減らせます。セミリタイアを検討している、ワークライフバランスを整えたい方にはぴったりです。ただし、アドバイザー案件は数が少なく、なかなか獲得できるものではありません。安定した収入が得られるかどうかは案件次第なので、貯蓄と体力をみながら挑戦するとよいでしょう。
COBOLの資格以外のスキルも磨こう
COBOLのスキルに加えて、新しい技術も学ぶのがおすすめです。JavaやPythonなど、他のプログラミング言語を学ぶことで、仕事の幅を広げられます。同時に、以下のような技術面以外のスキルもしっかり磨くことで、選ばれるエンジニアになりやすいです。
- 参画する案件の業界知識
- 古い仕様書などを読み取れる読解、解析能力
- 課題設定、問題解決力
- テスト設計や品質保証の知識
- コミュニケーション能力
- プロジェクト管理スキル
COBOLとこれらの技術を組み合わせることで、システムの移行プロジェクトなど、より高度な案件に携われるでしょう。











