――現在の勤務先で担当している業務についてお聞かせください
SREチームのリーダーとして活動中
イベントで登壇中の加藤さん
仕事内容
前職から、Web系システムの開発から管理、運用までを最適化してシステム全体の信頼性を高める、SRE(Site Reliability Engineering)エンジニアとしての活動を始めました。、現在の勤務先に転職したのは、2024年2月です。2024年の夏からは、SREエンジニアの肩書きを持ちつつ、SREチームのリーダーという立場で仕事をしています。チームリーダーとしての業務は、チームのビジョン策定や短期で取り組むべき課題の明確化、各メンバーが担当する業務のマネジメントなどです。同時に、自社の主要プロダクトで障害が起こった際の振り返りであるポストモーテムの作成やインフラの自動化、セキュリティチェックといった、SREエンジニアとしての業務を進めています。
業務で使用する技術
クラウドサービスはGoogle Cloudを使用しており、フロントエンドはNext.js、サーバーサイドはExpressを使っています。言語はTypeScriptです。社内やチーム内で使っているコミュニケーションツールはSlack、Google Meet、notionなどです。
Google Cloudは前職から使っていたのでスムーズに業務を進めることができました。TypeScriptを採用している企業も多く、記事など情報源も充実している言語のため、学習はしやすいと感じています。
勤務形態
勤務形態は、ほぼフルリモートです。全員出社日は月1回で、私の場合は月に2~3回出社しています。勤務時間は11時から16時をコアタイムとするフレックスタイム制で、残業は最近だと、月平均10時間前後です。
――平日の基本的な仕事の流れ、プライベートタイムの過ごし方を教えてください
多数のミーティングに参加しながら自身の作業を円滑に進める。休日はカフェやジム、旅行などを楽しむ
1日の流れ
朝は7時前に起きて、7時半までには朝食をとります。朝食後、YouTubeで学習法やゲーム実況、音楽の動画などを見ながら少し休憩し、8時前後から仕事を始めます。
参加するミーティングの頻度はかなり高めですが、朝10時まではミーティングがないので、その時間帯にその日のタスクを確認。ひとりでできる作業から進めるようにしています。
10時から12時まではミーティングの連続です。特定のプロジェクトに関するものや自分のチーム、開発組織としてのミーティングのほか、開発者が特定のトピックでフランクに雑談をするチルトークもあります。
午前中の予定が終わると、早めに昼食を取るようにしています。基本12時からの1時間が昼休みですね。午後は日によって業務内容がかなり異なりますが、チームのメンバーとの1on1ミーティングが1週間に5つほどあります。あとは所属部門のミーティングにも定期的に参加します。それ以外の時間を自分の作業に充てるという感じですね。スケジュールがタイトになることもありますが、ミーティングでチーム内外の社員と密接にコミュニケーションを取ることは、チームリーダーにとって必要不可欠な業務だと思っています。
19時から20時までにはその日の仕事を終わらせて、夕飯を食べた後はすぐに入浴。それからの時間は、本を読むか、彼女と電話で話すか、あとはその日に覚えた業務知識などの復習に使います。新しく得た知識をその日のうちに紙に書いたり自分の声に出したりしてフォローアップすると、知識を定着させやすいし、理解度も高まります。リーダーになってからは、これまで以上に業務知識の習得に力を入れるようになりました。
就寝時間は24時過ぎ。ネットで調べものなどをして、もっと深く調べたくなった時などは時間を気にせず続けてしまうこともありますが、遅くても1時までには寝るようにしています。
休日の過ごし方
週末は、彼女と会っていることが多いですね。土曜の朝は朝ごはんをいっしょに作ったり、昼はランチに出掛けたり、カフェに行ったりしています。彼女の友だちが月に1回カフェを開いていて、その店も利用しています。2人で旅行することも多く、最近では金沢や群馬の伊香保温泉を訪れました。私も彼女も温泉が好きなので、温泉地を中心に目的地を決めています。
ジムでのトレーニングも、プライベートタイムの大切な活動のひとつです。元々、週2~3回の頻度で筋トレをしていたんですが、今は週1回パーソナルトレーニングを受けるようにしています。ジムに通い始めたのは1年前で、痩せようと思ったことがきっかけでした。食事管理などをトレーナーから教わり、シェイプアップを目的にしたトレーニングをして、1ヶ月で10キロの減量に成功しました。その後、より健康的なトレーニング方法に変え、今は痩せる前と変わらない体重に戻ったんですが、筋肉量が4キロほど増加。最初は40キロを上げるのが厳しかったベンチプレスが、今では75キロを上げられるようになりました。ちゃんと筋肉つけるトレーニングのほうが楽しいですし、本質的に意味があると思います。
――今の仕事のメリットと大変な部分はどのような点でしょうか?
未知の領域に挑みながら、経営レベルの課題に取り組む
イベントで登壇中の加藤さん
今の仕事の良いところ
SREチームのリーダーというポジションで、プロダクトが新規ユーザーを獲得するために必要な技術要件やインフラの構成といった経営レベルの課題に取り組めることが、最大のメリットだと思っています。
私はコミュニケーションをとるのが得意なほうだと自負していて、エンジニアだけでなく、さまざまな立場の方々と意見交換しながら業務を進めることに楽しさを感じます。会社経営全体に影響を与える仕事ができる点は、今の仕事の大きな魅力です。
今の仕事の大変なところ
前職ではある程度、前提が決まっている業務を行っていたんですが、今の仕事で挑戦していることは未知のものが多く、エンジニアとしての業務だけで完結しません。会社全体との関わり方を自分で判断して、必要な情報を入手し、自分たちにできることを検討する必要があります。そこが非常に大変であり、一方、魅力でもあると考えています。
未知の領域でも、これまでの経験から「できなくはなさそうだな」という糸口を見つけることは可能です。周囲の人々と協力しながら課題に取り組むプロセスは、ワクワクする部分が多いと思います。
――現在の勤務先に転職したきっかけは?
ユーザーの声に耳を傾けてSREに取り組みたかった
インタビューご対応中の加藤さん
仕事に就いたきっかけ
転職時に最優先で考慮したのは、自分たちが開発・運用するプロダクトに対するユーザーからの反応や意見を聞くことのできる職場で働きたいという点でした。
実際にプロダクトを使っているユーザーから寄せられる声は、SREエンジニアが課題の抽出や改善を行う際に最も重視すべき情報のひとつです。前職で開発したプロダクトはリリースされたものの、多くのユーザーに使ってもらえるようになるには、まだ何年もかかるような状況でした。ユーザーの声が反応として戻ってきて、その声を元に行動できる職場で働きたいと思っていました。そうした希望に合致していたのが、現在の勤務先です。
現職の採用選考では、私が前職で取り組んできたゼロからプロダクトを開発する取り組みを高く評価していただき、 入社後にどのような業務を担当するのかを明確に伝えてもらえました。それが、入社を決めた大きな理由でした。
また、使用しているクラウドサービスや言語が前職とほぼ同じだったので、移行しやすいと感じたこと、会社のドメインであるコミュニティ事業に興味があったことなども、転職を決めた要因です。私自身、Web系のエンジニアになりたいと思い始めた頃に、Webエンジニアの育成を目的にしたコミュニティに所属していて、そのコミュニティの方々にいろいろと助けてもらった経験があります。そのため、コミュニティ関連のプロダクトを扱う現在の業務は、私にとってとても魅力的です。
――これまでのキャリアの中で学習してきた内容を聞かせてください
ブランクを経てエンジニアに復職した時から自発的な技術学習を開始
これまでの学習内容
大学院修了後に新卒入社したSIベンダーで自動車業界のシステム開発を担当し、業務を通してエンジニアとしての基本スキルを学びました。IT関連の分野を積極的に追求しようという意識が強くなったのは、2社目の勤務先に入社してから。1社目の会社を辞めてから、3年弱のブランクがあったんですね。このままではまずいと思い、業務に必要な知識やスキルだけでなく、自発的な技術学習に取り組むようになりました。2社目の勤務先はレガシーな環境だったので、今後のためにクラウドサービスなどのWeb関連のスキルや新しい言語やツールに関する学習が必要だと感じました。
その当時と同様、今もマネジメントやSREに関する最新知識を学ばなければいけないという気持ちを強く持っています。ただ、チームをマネジメントする上で必要なコミュニケーションスキルなどを特に苦労して学んだ記憶がないせいか、まだ専門的なスキルを持っているとは思えていません。チームリーダーやPMとしてのスキルを伸ばすことはもちろん、同時にセキュリティ領域など、特定分野の専門スキルを身につけることが、現在の課題だと考えています。
――学習に役立った書籍、取得した資格は?
Google Cloud 主催のプログラムに参加し、Professional Cloud Developer資格を取得
おすすめの書籍
最近は、仕事に関連する実用的な本、組織論やチームマネジメントをテーマにした本ばかり読んでいます。『科学的根拠に基づく最高の勉強法』は、効率よく確実に新たな知識を得るためのポイントを記した本で、日々の業務知識の習得に役立っています。
保有資格
2022年5月にGoogle Cloud が主催するGoogle Cloud Innovators GymというGoogle Cloud の技術スキル習得を目的としたプログラムに参加し、そのプログラムの修了要件だったProfessional Cloud Developerを取得しました。基本情報処理技術者は2023年に取得しています。
資格名 | 取得年 | 概要 |
Professional Cloud Developer | 2022年 | ・Google Cloudを使った開発業務に必要な知識を問う試験 ・試験では、Cloud RunをはじめとするマネージドサービスやKubernetes、Cloud SQLといったデータベースサービスの使い分けなどが問われる |
基本情報処理技術者試験 | 2023年 | ・ITを活かしたサービスやプロダクト、システムなどを作る人材に必要な基本知識・技能を備え、実践的な活用スキルを身につけていることを証明する資格 ・ITを活用した戦略立案、システムの企画・要件定義、設計・開発・運用に関する知識やスキルが問われる |
――SREエンジニアに必要な適性とは?
重要なのは、自分が抱いた疑問を周囲と共有して追求し続ける姿勢
この職種に適性がある人
まず、ワンパターンな考え方を安易に適用しない、前提を疑う姿勢が大事な適性だと思います。自分が感じた「どうして?」という疑問を追求し続ける姿勢が重要です。さらに、その疑問を丁寧にコミュニケーションをとって周囲の人々と共有することも必要です。
疑問点や不明点が生じた際には、聞き方に十分注意して上司や先輩に相談すべきでしょう。そうした姿勢で何らかの課題解決に取り組める人は、SREエンジニアに向いていると思いますね。相手をリスペクトしてコミュニケーションをとることは、エンジニアの大切な適性のひとつだと感じています。
今の勤務先には、こうした点を意識できているスタッフが多く、スムーズにコミュニケーションをとることができます。
――今後のキャリアパスや目標を教えてください
マネジメントスキルの強化、セキュリティ領域の専門スキルの習得をめざす
インタビューご対応中の加藤さん
今後のキャリアパス
人とコミュニケーションをとったりチームをマネジメントしたりという部分は自分でも得意なほうかなと思っているので、マネジメントスキルを強化してキャリアアップしていくというビジョンを抱いています。
その一方で、特定の技術領域に関するスキルを伸ばしたいという気持ちもあるんです。SREに携わっていくうちに、セキュリティ領域への関心が高まってきたこともあって、情報処理安全確保支援士の資格を取得し、専門職として情報セキュリティに携わるような方向性も視野に入れています。
私のおすすめガジェット
2023年11月に購入したERGOTRON(エルゴトロン)のモニターアームがおすすめです。以前はディスプレイをデスクに縦置きしていたんですが、このアームを使うようになってからデスクを広く使えるようになり、非常に作業がしやすくなりました。
まとめ
SREエンジニアとして活躍している方の仕事内容や今後イメージしているキャリアパスについてお伺いしました。
これまでにどのようなインプットを経て現職に辿り着いたのか、今の仕事で大変なことなど実際にエンジニアとして働いているからこそのリアルな声をシェアしていただきました。
未経験からエンジニアを目指している方や転職を考えている方にとって非常に貴重なインタビューでしたので、皆様の今後の活動の参考になれば幸いです。