――今の仕事内容を教えてください
ネットワーク構築やトラブルシューティング、独自開発したパケットレコーダーの販売などの事業を展開

仕事内容
株式会社デベルアップジャパンのインフラエンジニア兼社長として、ネットワークの構築やトラブルシューティング、運用サポートといった業務を行っています。
また、独自に開発した常設型のパケットレコーダー・Sonarman(ソナーマン)の販売も手掛けています。Sonarmanは、異常が発生した際の高精度な遠隔サポートを可能にする、ITトラブルシューティング支援システムです。
業務で使用する技術
この会社で行っている業務には、ネットワークやサーバー、データベースなどに関する幅広い知識とスキルが必要になります。特に事業の軸であるトラブルシューティングに利用するパケットキャプチャに関する高度なスキルは、非常に重要性が高いものです。
勤務形態
会社の組織形態としては、今のところ常勤のスタッフは雇用せず、基本的に私一人で仕事を進めています。仕事の状況に応じて、私が技術顧問として契約している企業のエンジニアに業務を委託することもあります。
勤務時間は完全裁量労働制ですが、基本的に9時から17時30分までの時間帯に仕事をしています。残業は正確にカウントはしていませんが、ほぼ残業時間はありません。
――今の仕事の良いところ、大変なところは?
お客様と直接コミュニケーションをとる営業活動や原因不明のトラブル対応に難しさと興味深さの両方を感じる

独自開発した常設型パケットレコーダー「Sonarman」
今の仕事の良いところ
経営者として営業活動をダイレクトにハンドリングできる点が、非常に興味深く、面白いですね。営業は、自分が手掛けたエンジニアリングをお金に変える活動です。お客様と直接お話をして理解していただく、価値を見出していただく営業のプロセスには、いろいろな発見があります。お客様の状況を理解した上で、どんな提案をしたらいいのかを確認して、課題の解決方法をいっしょに見つけ出す作業です。面白いし、もちろん難しい部分でもあります。
会社員として17年間働いてきた中の約15年は、情報システム部門のスタッフとしてさまざまな問い合わせを受けて対応する業務を担当してきました。当時の仕事と比べると今の仕事は、時間的にも内容的にも余裕をもって取り組むことができていると思います。自分の得意分野に絞った事業を行う会社を立ち上げたので、仕事がとてもシンプルになりました。依頼や相談に対してプロとして対応することだけに集中できます。
今の仕事の大変なところ
主軸事業がトラブルシューティングなので、初めて見る異常を発見したり、原因不明のエラーが出たりといったケースも珍しくありません。そうしたケースへの対応は難しいものですが、厳しさと同時に興味深さを感じて仕事をしています。トラブルの原因を特定した時には、全能感に包まれるような喜びがあります。
――平日の1日の流れについて聞かせてください
急ぎの仕事がない日にトラブルを未然に防ぐ方法の検討を実施する
平日の流れ
朝9時前には事務所に出勤し、その日のタスクの確認や準備を行います。自宅と事務所が近いので、始業までの時間は比較的余裕をもってのんびりと過ごすことができます。
始業後の業務の中心は、お客様に提出するレポートの作成とトラブル対応の2つ。この2つの業務をスケジュールに沿って順次進めますが、それ以外にルーティンワークにしているような業務は特にありません。
すぐに取り掛かる必要のある仕事がない時間帯には、 自社製品においてトラブルを未然に防ぐ方法を検討することが多いです。また、お客様の都合に応じて適宜、情報共有やシステムの運用方法に関するミーティングを行っています。こちらから提案のためのミーティングをお願いするケースもあります。
仕事中の空き時間や終業後に毎日欠かさず行っているのは、業務に関連する情報収集や技術学習です。。こうした活動も含めて、事務所を出た後も、食事や入浴以外の時間は仕事関連のことを考えたり、調べたりすることが多い生活を送っています。
――仕事とプライベートの切り替え方法は?
得意分野に絞った今の活動は仕事であり趣味でもある
仕事のプライベートの切り替え
仕事とプライベートの切り替えは、あまり意識していません。時間に余裕がある時に公園で筋トレをする程度です。
得意分野、興味分野に絞った事業を行う会社を立ち上げたので、私にとっては仕事が趣味なんです。やりたいと思った仕事や学習を続けて、疲れたら休むようにしています。
――インフラエンジニアになったきっかけ、起業したきっかけは?
ヘルプデスクを担当しながらインフラチームに参加。市場が求めるシステムの提供をめざして起業

インフラエンジニアになったきっかけ
新卒入社した会社で私が配属されたのは、情報システム部門です。大学で専攻していたのは微生物や化学に関する分野だったので、ITについての専門知識は持っていませんでした。OSのインストール程度はできるといった状態で仕事を始め、ヘルプデスク業務を担当。社内の各セクションからかかって来る電話に出て、ユーザーが話しているトラブルや疑問点などを整理して担当者に電話を回したり、現場に行って状況を確認したりといった業務を約3年間行いました。
この担当業務と並行して、インフラチームのメンバーにも任命されていました。そのチームで、将来的にネットワークやサーバーなどに関する専門知識を活かす業務を担うための勉強を開始したのが、インフラエンジニアとしてのキャリアの第一歩です。ネットワークやデータベース、サーバーといったインフラエンジニアとしての知識やスキルを身につけた結果、海外拠点のインフラ運用サポートの担当者となり、その業務を約10年間にわたって担うことになりました。
起業したきっかけ
会社員時代に、まず副業としてビジネスを始めました。当時、10か国21の海外拠点のインフラ運用のサポート業務を1人で担当しており、業務効率化のために作り始めた管理ツールが、Sonarmanの原型です。
実は、私は英語がほとんど話せないんですね。海外拠点のサポートをする上で、英語が得意ではないことは、非常に切実な問題でした。英語を使ってコミュニケーションをとらなくてもサポート業務ができるシステムを開発したかったというのが、管理ツール作りに取り組むようになった大きな動機です。
パケットキャプチャをはじめとするトラブルシューティングのためのプロダクト開発や法人向けの営業活動を、会社が休みの日を使って約7年間行いました。ある程度ビジネスとして形になってきた2019年に、会社を退職して独立しました。
インフラエンジニアとしてキャリアを積んでいくうちに、一気通貫でシステム全体を作ってお客様に提供したいという目標を持つようになっていたんです。その目標を自分の会社で実現させ、市場で求められるシステムを世に出したいと考えたことが、起業を決断するきっかけになりました。
――これまでの技術学習について聞かせてください
インフラ系からプログラミングを経て、起業後は新規ビジネス開発のための学習・研究を継続して実施
これまでの学習内容
新卒入社した会社でネットワークを中心に、データベースやサーバといったインフラ系の学習を開始。担当業務で軽いスクリプト、Excelマクロなどを使うことがあったので、独学でプログラミングについての学習も始めました。
本格的にプログラミングを学び始めたのは入社10年目の頃です。ネットワークスペシャリスト資格を取得後に、C言語を学習。その後、PHPやPython、ShellScriptなどについて学びました。新しい技術を学ぶ際には、常に実務への応用を重視していました。
起業後の学習テーマは、会社員時代から長年対応してきた現場の人たちの困りごとを解消するビジネス開発に向けた研究です。ヘルプデスクやサポート業務の経験を通して、現場の人の悩みや、その悩みを解決するシステムがない理由を理解するようになりました。
現場が抱える悩みが解消されない主な理由としては、悩みの解決に必要な予算の不足、費用対効果の高い解決策がないことなどが挙げられます。では、どんなシステムだったら開発できるのか、ビジネスになるのかといったテーマに即した学習や研究に取り組み続けています。
学習や研究に役立ちそうな機材やツール、書籍などは惜しまずに購入するようにしています。
私は学生時代にウェイトリフティングをやっていてインカレ出場の経験もあるんですが、そこで学んだことは「継続が勝つ」ということ。ウェイトリフティングという競技では、大学生と社会人の選手の差は、話にならないほど大きなものです。社会人選手は1日のトレーニング量が大学生より少なくても、長年継続して筋力を高め続けています。ケガをせずに継続してきた人が、最終的に強くなるわけです。
会社に入ってITを学び始めた時、ウェイトリフティングと同じで何より継続が力になると思いました。常にto doリストを頭に入れて、少しでも隙間時間があったら検証や開発をして、リストにチェックを入れることを習慣にしてきました。
年 | 主な学習内容 |
2002年~2010年 | ネットワーク、データベース、サーバーなどのインフラ系技術 基本的なプログラミング |
2012年~2019年 | C言語、PHP、Python、ShellScript |
2019年~現在 | 新規プロダクト・サービス開発のための学習・研究 |
保有資格
2010年にネットワークスペシャリストを取得しました。ネットワーク関連の問題は業務で得た知識で対応できたので、特に対策は必要なかったです。応用情報技術者試験と同じ範囲から出題される共通問題については、市販の問題集を使って試験準備を行いました。
資格名 | 取得年 | 概要 |
ネットワークスペシャリスト試験 | 2010年 | ・ネットワーク固有の技術を活用して、情報システム基盤の企画や要件定義、開発、運用、保守といった業務で中心的な役割を担うことのできるスペシャリストであることを証明する資格 ・試験では、ネットワークエンジニアやインフラエンジニアに求められる専門スキルと広範な知識が問われる |
――おすすめの技術書は?
ネットワークプログラミングとデータ分析基盤の理解に役立った2冊
ネットワークはなぜつながるのか
2012年に読んだ『ネットワークはなぜつながるのか』は、ネットワークプログラミングについての理解を深めることができる、おすすめの技術書です。
データ分析基盤構築入門
2018年に購読した『データ分析基盤構築入門』は、私が開発したSonarmanに活用されているデータ分析基盤の構築手法を解説した本です。パケット解析の結果を時系列分析可能なグラフィカルな可視化システムに入力する手法について学ぶことができます。
――今後のキャリアパス、興味を持っている技術をお聞かせください
パケットキャプチャ技術を活用して自社プロダクトの社会実装をめざす
興味のある技術
私の会社の主軸事業であるトラブルシューティングに使うパケットキャプチャの技術には、常に強い関心を向けています。
パケットキャプチャは、ネットワーク上の通信パケットを収集する手法です。パケットキャプチャで得たデータは、ツールを使って人が見ます。
パケットの内容は、言葉と同じで国や時代によって異なるんです。10年前と現在のパケットでは大きな違いがあります。パケットを読みながら、使い方のトレンドを理解していきます。パケットの変化から、ネットワーク上で起きている問題を知ることも可能です。パケットから情報伝達に関するトレンドや問題を発見する作業は、とても興味深いものです。
今後のキャリアパス
会社の経営者としての活動を今後も長期間、継続していきたいですね。続けることが大きな価値を生むと考えています。
自分が開発したプロダクトを社会実装させてお金を得るために、より多くの人に使っていただく、価値を感じていただく活動に取り組んでいきたいです。そのための具体的な課題としては、プロダクトの普及やマーケットニーズの掘り起こしの施策立案などが挙げられます。
こうした課題の解決には、お客様のニーズを正確に把握するヒアリングスキルや自社プロダクトに関心を持っていただく提案力が必要です。最新技術やIT業界のトレンドをキャッチアップしながら、経営者としてのコミュニケーションスキルの向上に取り組み続けていきます。
くわえて、新しいサービスの開発にも挑戦していきたいです。
――インフラエンジニアの適性があるのはどのような人だと思いますか?
技術への興味を長期間継続させて、適切なタイミングで行動に移すことができる人

この職種に適性がある人
常にテクノロジーに対して興味を向け続ける人、考えたことを適切なタイミングで行動に移すことができる人は、インフラエンジニアに向いています。この2点は、会社員時代も起業後も、専門職としてネットワークや情報システムなどに携わる上で重要な適性だと考えています。
自分が興味を持った分野の活動や学習を長期間、継続させることが大切です。少しずつでもいいので中断せずに続けてきた結果が、大きな価値を生むことになります。
私のおすすめガジェット
2020年に購入したLenovoのタブレットを技術書をはじめとする電子書籍用として使っています。軽量で握りやすい形状なので、持ち運びに便利です。
まとめ
インフラエンジニアとして活躍している方の仕事内容や今後イメージしているキャリアパスについてお伺いしました。
これまでにどのようなインプットを経て現職に辿り着いたのか、今の仕事で大変なことなど実際にエンジニアとして働いているからこそのリアルな声をシェアしていただきました。
未経験からエンジニアを目指している方や転職を考えている方にとって非常に貴重なインタビューでしたので、皆様の今後の活動の参考になれば幸いです。